CRM/MAとは? メリットデメリット を含めて知っておきたい基礎知識と活用方法
今回はCRM/MAについて、特徴、メリット・デミリットをデジタルマーケティング論の観点、特にメリットとして機能の拡張、デメリットとしてコスト増という形で、目次に従い概説します。また、その活用方法についても言及します。
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はじめに
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経済産業省の「電子商取引に関する市場調査(2020年7月)」によれば、2019年のEC市場規模(B2C分野)は過去5年間で1.5倍増加し、年間10兆円を突破しました。2020年について見れば、3月以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響による実店舗を通じた営業活動の制限・縮小、それに伴い小売企業やメーカーのデジタルシフトへの加速が顕著となっています。
企業の経営戦略、特に対顧客営業・マーケティング戦略も、“メイン実店舗・サブとしてオンライン”から“メインにオンライン、実店舗は補完的な位置付け”への見直し・シフト化が進んでいます。
他方、個別的・テーラーメイド的な顧客対応を旨とするOne-To-Oneマーケティングの重要性も再認識されています。統合型CRMマーケティングオートメーション(統合型CRM/MA)はOne-To-Oneマーケティングと補完関係にあり、効率的な活用により、貴重な経営資源である人材・システム・資本の効率的・効果的な配分の達成も可能となります。
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CRM/MAの概要
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1990年代初頭B2Bの分野でCRMは顧客関連のトータルデーターベースとして導入され、実行型あるいは分析型へと枝分れしました。MAですが、法人営業活動の支援ツールとして実行型CRMに分類・導入されました。
インターネットの拡大に伴い、現在では特にB2C(Business-To-Consumer)やD2C(Direct -To-Consumer)の分野を中心に、デジタルマーケティングの根幹システムとして、顧客として認識される以前の段階をMA、顧客として認識された段階からはCRMがカバーするという統合的CRM/MAを指すことが多くなっています。
まず、歴史的な背景から概説します。
純粋型CRMのブームと終焉
CRMは、Customer Relationship Management の略で、1990年代に、B2B(Business To Business)の分野で、まずアメリカで発達し、日本にも広がった法人営業における経営戦略の一つです。
CRM 本来の考え方ですが、極めて理想的かつ総合的なもので、取引顧客企業だけでなく、商品・サービスの納入企業・業者等、全ての企業・業者情報を統合データー化し、顧客情報の共有化ならびに次号のステップを通じ営業活動の効率を上げていくというものでした。
a. 顧客情報の一括管理:取引相手である法人の情報が、名刺やエクセルの顧客リストあるいは営業日誌など、様々な形で企業内に内在している状態を改善し、社内全体で体系的に一つにまとめ管理・活用する。
b. 各部門の顧客の情報共有:同じ法人内でも、例えば、コピー機メーカーに対し、営業部門でセールス交渉が行われる際、総務部門でのコピー機の一括リースという情報が活用されていない。社内に総括的な顧客情報が未整備で、こうした縦割り的なアプローチがなされている状態を改善し、各部門の顧客の情報共有を通じ、顧客へのアプローチの効率化を図る。
c. セールスサイクルの短縮:顧客情報の完備、顧客への効率的なアプローチにより、セールスサイクルの短縮、結果として売上の増加を目標とする。
d. 人材資源の効率的運用:セールスサイクルの短縮により、営業活動における人材資源の効率的な運用が達成できる。こうした純粋型CRMには、極めて大型で複雑なシステム構成が必要であり、設計・導入・メンテナンス等全ての面で難易度が高く、CRMという箱が導入された後も、必須情報の更新・蓄積が行われず、あるいは、特定のユーザーしか使えないという問題が発生しました。その結果、期待された成果を生み出すことなく、ブームは短期間で幕を閉じました。
純粋系CRMの失敗後は、機能を絞った形で実行系 (Operational) CRMと分析系 (Analytical) CRMに枝分かれし、発展しています。実行系(Operational) CRMへの発展(法人営業支援ツールとしてのMAも含む)
実行系 CRMは、顧客とフロントオフィスとの間のプロセスを改善し、対顧客関係の向上・改善を目的としたものです。
• Sales Force Automation (SFA):顧客との交渉状況、案件の進捗状態を把握し、営業方針に基づき、営業成果の達成を目指す。
• Service Automation:コールセンター、FAQやナレッジベースなどにより、カスタマーサービスのクオリティー向上を目指す。音声、Eメール、チャットなどのチャネルと、顧客応対の履歴もシステムに登録する。
• Marketing Automation :B2Bの顧客区分毎に設定したアプローチやアクションの自動執行、具体的にはメイルマガジンやイベントへの案内、セールスレターの自動発信を通じリードナーチャリング等による営業初期段階の支援を目指すものです。営業部門での手作業を削減する為の仕組みやプラットフォームを指します。尚、B2Bの顧客区分ですが、次の通りとなっています。
1) 見込み顧客予備軍
2) 見込み顧客
3) 顧客
4) ロイヤル顧客統合型CRM/MAの登場
統合型CRM/MAは、B2CあるいはD2Cの分野での利用も考慮し、デジタルマーケティングを念頭に機能を絞込み、特化したものです。高速処理に長け、単にCRMとMA間をシームレスに統合しただけでなく、HPとの接続も容易になるよう工夫されています。
特に、顧客区分にインターネットユーザーが追加され、EC市場でのデジタルマーケティングの対象となるターゲット層が全てカバーされています。
性別、年齢、居住地といった単なる属性だけでなく、購入商品や購入時期等の購入履歴、アクセスしたECサイト、アクセス日時時間などの閲覧・行動履歴、配信されたメールの開封状況などもレコードされ、嗜好分析等、様々な観点からの分析、提供する商品やサービスとの紐付けも可能となりました。顧客データの保全・保護も考慮されています。
また、顧客とのコミュニケーションチャンネルも、対象やタイミングに合わせて、メールやLINE、SMS(ショートメール)だけでなく、DMの郵送も含まれるなど一層充実しています。
但し、導入・開発・維持には専門性の高いシステムパートナーの存在が不可欠です。
(詳細については代表的なプロダクトであるMOTENASUを参照願います。) -
One-To-Oneマーケティングと統合型CRM/MAの有機的活用
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対顧客営業・マーケッティング戦略の主たる目的は、インターネットユーザーからロイヤル顧客への階層間へのステップアップに資するアクションやアプローチをタイムリーかつ効率的に行い、顧客という収益基盤の堅持を図ることです。
キーとなるアクション・アプローチには次のようなものがあります。
a. 自社の商品やサービスをHPに掲載、或いはインフルエンサーの動画配信を通じ、インターネットユーザーの興味喚起
b. 自社の製品・サービスに興味を示した顧客予備軍のデーター化
c. 問合せの有無などから顧客予備軍から見込み客(リード)の発見
d. HPでの閲覧履歴を分析し、リードからターゲット顧客・ホットリードへの絞込み
e. 準テーラーメイド的なアプローチを通じ、ホットリードから顧客レベルへの引上げ
f. テーラーメイド的なアプローチを通じ、リピーター・ロイヤル顧客として育成・確保One-To-Oneマーケティングの基本
One-To-Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりの趣向や属性などを考慮し、顧客に対して個別にマーケティングを行っていくという手法を指します。
企業からの配信情報が、その他大勢のうちの一人(one of them)としてではなく、自分専用にテイラーメイドされたものであるとリードや顧客サイドで受け取られるようになれば、企業のアプローチやアクションをポジティブに反応し取引に応じてくれる可能性が高まります。
また、リードや顧客が上位の顧客区分にステップアップする確率も高くなります。
但し、テイラーメイド的な対応・コンテンツの充実には、準備段階から手間の多い作業が増えますし、その効果について後日の検証・修正作業が必要となる点留意が必要です。
One-To-Oneマーケティングと統合型CRM/MAとは補完関係
各顧客区分におけるOne-To-Oneマーケッティングの関わる割合を示すと次のようになります。
• インターネットユーザー:ほぼゼロ
• 見込み顧客予備軍:ターゲット顧客層向けに準じたOne-to-One対応が開始される
• 見込み顧客:ターゲット顧客層向けのOne-To-One対応が開始される
• 顧客:個人ニーズを意識したコンテンツの多いOne-To-One対応
• ロイヤル顧客:個人ベースに特化したOne-To-One対応統合型CRM/MAのそれと補完関係にあり、その効果的な活用により、One-To-Oneマーケティングの質の向上・収益性の拡大に繋がる確率が高くなります。
但し、システムの難易度が高まれば、失敗の可能性やシステム投資・メンテ費用の大幅増加となる可能性がある点留意が必要です。
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留意点とまとめ
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統合型CRM/MAはデジタルマーケティングの基幹システムです。顧客属性やコンテンツの細分化により、デジタルマーケティングの成功率は引揚げられます。但し、開発導入時に時間と費用がかかるだけでなく、その後も、定期的な見直し、検証・評価、維持メンテナンス等にも時間と費用がかかります。大規模なシステム導入が期待通りの効果をあげることなく、お蔵入りとなるケースも多々あります。
デジタルマーケティングに特化した軽量級の統合型CRM/MAはテーラーメイド的な顧客対応が中心となるOne-To-Oneマーケティングと補完関係にあります。システム関連費用を抑えながら、その活用を通じ、営業スタッフやその他の営業資源を効率・効果的に収益率の高い顧客・ホットリード等に振向けることが可能となり、収益性の向上に繋がっていきます。
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One to OneマーケティングとDM施策の有用性
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