今さら聞けないマーケティングの基本!「ベネフィット・差別化・エンゲージメント・4Pとは」後編

MA(Marketing Automation)という言葉をよくニュースや専門紙などで見る機会が多くなった昨今、「ツールとしてどのように使うか?」「そもそもマーケティングについて知見がない」と様々な疑問、課題をお持ちの方も多いと思います。今回は今さら聞けないマーケティングの基本について(後編)を解説します。

1.前回のおさらいと手順

前回「今さら聞けないマーケティングの基本!前編「ベネフィット・差別化・エンゲージメント・4Pとは」」で多くのマーケティングの教科書や参考書に記載されている「今さら聞けないマーケティングの基本」として

 

  • 1)ベネフィット=「価値」(ゴール・目的)の設定
  • 2)強みと競合他社との差別化=高い価値、勝負どころの見極め
  • 3)セグメンテーションとターゲティング(エンゲージメント)=「価値」に対しての理解者の発見と見極め
  • 4)4P(製品・価格・広告・販路)マトリクスの明文化=競合他社と差別化点を理解者に提供する手段・手法

 

を紹介しました。これを踏まえると、つまり

 

  • 1)対象とする人が求めるベネフィットとは何か?
  • 2)競合他社より優れている点や差別化のポイントは何になるのか?
  • 3)そのポイントを理解して貰えるのは誰なのか?
  • 4)具体的にどのような実行をするのか?

 

という流れで順番に考えて図解することで、全体的に整合性や統一感が出せて、進むべき方向性が見出せると思います。もちろん、ここで記載している方法も手段・手法の1つに過ぎず、もっと深くマーケティングを考えると細かなことも多くありますが、基本中の基本として、こちらを記載させていただきます。

 

 

2.実例をつかった考察

実例として、筆者も大好きな東京ディズニーランド(以下、TDL)を例に上記の1)~4)を記載してみようと思います。TDLが来場者に提供している価値の高さは疑いようがないものだと思います。子供から高齢者まで全員が笑顔になれるアミューズメント空間を提供しており、顧客のライフステージに合わせて一度ならず何回も行くことがあると思われます。

 

実際、TDLの運営会社であるオリエンタルランド社の2006年における一般公事レポートでは、年間入場者数は2477万人に達し、客単価は9220円/人になったとしています。約2500万人という入場者数も十分にすごい数値なのですが、ここで注目したいのは、客単価が約9000円である点です。仮に4人家族(夫婦と子供2名)だと、TDLに行った際に使う平均金額は36000円になり、高い価値を提供し、それに対して対価(お金)を回収できているとわかります。また客単価の内訳は、チケット代が4038円(全体の約半分の44%)で、続いて多いのが物販で3144円(約34%)、飲食で2039円(約22%)という割合になっています。意外とチケット収入が少ない形態になっており、来場に紐付く物販や飲食を足すと消費額の半分以上になることに気付きます。つまり、来場をして貰った上でイベントや乗り物での体験を経て、そこに付帯するショップやレストランなどでの収入が大きな柱になっていることがわかります。

 

TDLと同じく東京ディズニーリゾートを形成するディズニーパークである「ディズニーシー(以下、TDS)」ではその点が顕著になっており、さらにTDLは子供連れの家族層をターゲットとしているのに対して、TDSはパーク内でお酒が飲めたりと、比較的ターゲット年齢を上昇させている点に気付かれると思います。実際にTDSのアトラクション・ショーは32種類(全体の32%)、ショップ数が33店舗(全体の33%)、レストラン数が35店舗(全体の35%)と施設数を数えて見ると、そこに狙いが明確化していることが伺い知ることができます。

 

施設数を数えてみるとショッピング施設とレストランの比率の合計は68%となり、7割近い数字になっていることから、客単価を上げる施策が張り巡らされていることに気付くかと思います。ここで見えてくるのは、TDLは、アトラクションやショーで集客を行い、ショップや飲食店で客単価の半分以上を稼ぐ巨大なショッピングパークになっている点です。私が小さい頃のTDLはチケット制度になっており、乗り物に乗車するたびにチケットを購入し、人気のあるアトラクションであれば、チケット購入で長時間並び、アトラクションを体験する際にも長時間並ぶという時間ロスが発生していました。しかし、今は1dayパスポートなら1日乗り放題になっており、乗り物ごとにチケットを買う行為から解放され、その空いた時間をショップでの買い物やレストランでの食事に変換することで、パーク内で思いっきり遊んだという充実感が味わえるのです。

 

よくよく考えてみれば、パーク内には所狭しとベンチがあったり、そのベンチの近くには500円から1000円程度の軽食が買える移動式販売店があることに気付きます。パーク内は広大で、歩くだけでも非常に疲れますが、それを理由に満足度を低下させない工夫がここにもあるんですね。夜にはエレクトリカルパレードという夜を彩る素晴らしいショーがあり、それを見る「価値」があり、その「価値」を得たいが為に、その時間帯まで客をパーク内に留める施策がされているのです。夜まで待つと当然のことながら、パークを出て食事をするより、パーク内で夜食を食べようという気持ちになり、さらなる集金の仕組みにつながることになります。つまり、パーク内における滞在時間が生命線になっているために、その価値の提供も昼夜に分けた形で行うモデルになっているのです。

 

TDL自体は、非常に素晴らしい価値を提供しており、そこは、まさに夢の国であり、魔法の国です。しかし、その価値を提供するには、従業員の教育はもとより、イベントやアトラクションの工夫や投資に惜しみなく資金を投下し、価値を提供した後の集金の仕組みをパーク内の敷地を舞台に張り巡らせる必要があり、それを徹底しているのです。特に、TDLのマニアの間ではおなじみですが、裏メニューと言われる「誕生日に提供される子供用のランチ」の凄さや、結婚式の特別プランなど、さらなるプレミアムメニューが用意されていたりしますので、この文章を読んだ皆様がTDLに行かれる際は、注意してみると、また違った楽しみがあるかと思います。

 

 

3.おわりに

マーケティングの本質は『お客様に価値を提供して、対価(お金)をいただくこと。またはその手段手法』そのものであり、単純明快です。しかし、そこに至るまでは簡単ではなく、価値と対価のバランスはもちろんのこと、それが競合他社との関係や世の中の風潮も加味した上での戦略性が重要になってくると思います。

 

FIDではそれらを踏まえて、現状を理解した上で最適な戦略を見出すマーケティングのお手伝いができます。詳細はここでは記載しませんが、もしご興味があれば、お問合せください。

>お問合せはこちら