マーケティングオートメーションにおけるシステム側から見た顧客分析の重要性と、情報伝達手段の多様性

現在、デジタルマーケティングの分野で注目度を増しているマーケティングオートメーション(以下、MA)システム。アメリカで普及した、Webにおけるマーケティング活動を自動化する画期的なツールです。
今回は、MAの中でも特に重要視されている「顧客分析」と「情報伝達手段の多様性」について、掘り下げてみようと思います。

1. MAにおける役割

MAにおける顧客分析とは、「リードクオリフィケーション」と呼ばれています。あらかじめ個人を特定することのできる顧客データに対して、定量・定性データをもとに絞込みを行い、ロイヤルティ顧客、購買意欲のありそうな顧客、離脱しそうな顧客、購入意思が見込めない顧客など、マーケターがまさに欲しい情報を一瞬にしてクラスター化します。その分析結果にてグルーピングされたリードごとに、最適化したシナリオを発火させることにより、顧客にとって特別な体験を提供することができるのです。まさにOne to Oneマーケティングの本質は、顧客分析無くして語れません。
シナリオの配信など、顧客に対してのアプローチは、「コミュニケーションチャネル」によって行います。コミュニケーションチャネルは「リードナーチャリング」に分類され、多くのチャネルが存在します

 

  • 新聞、雑誌
  • Eメール
  • SMS (ショートメール)
  • LINE
  • Webプッシュ
  • DM (ダイレクトメール)
  • 電話
  • インターネット広告

 

上記のような様々なチャネルを用いて段階的にアプローチを行い、少しずつ購買意欲を高めていくことがMAシステムにおける基本的なリードナーチャリングです。
また、買って欲しい・契約して欲しい商品が高額であるほど、購入までの意思決定が遅い傾向となっています。その場合、このようなコミュニケーションチャネルを用いたリードナーチャリングで中長期的な関係を築き上げることがとても大切です。

 

2. リードナーチャリングとは?

リードナーチャリングとは、獲得済みのリード (見込み顧客) に対して、企業および製品を理解・共感してもらい、顧客を育てていく手法のことを言います。今までは、自社製品をマスマーケティングで認知させ、興味・関心を惹き、購買に結び付ける手法が主流でした。
しかし、Webの普及により一般消費者が誰でもPC・スマートフォン・タブレットなど様々なデバイスを通じて簡単に製品の情報を仕入れることができる時代に突入しました。自分の探している商品名 + 口コミ などで検索するだけで、比較できるサイトが山ほど出てきます。

 

そのようなテクノロジーの進化により、企業側の一方的な売り手市場は終わりを告げ、消費者による買い手市場にシフトしました。マスマーケティング時代は資金に余裕のある企業が圧倒的な力を誇っていましたが、Webマーケティングは戦略が全てです。
そこで注目されるようになったのが「リードナーチャリング」です。リードナーチャリングとは、獲得済みのリードに対してメールマーケティングやコンテンツマーケティングといった様々な手法により、顧客に自社をもっと知ってもらい、自社の製品を認知してもらい、自社の考え方やビジョンなどに共感してもらい、最終的に購入に至り、感動を提供する顧客育成のプロセスのことを言います。

 

3. MAにおける顧客分析

MAにおける顧客分析の手法は多岐にわたります。顧客分析とコミュニケーションチャネルによる、顧客一人ひとりにパーソナライズされたアプローチが、ロイヤルカスタマーを創出する主流となりつつあります。
以下に、基本的な分析手法をご紹介いたします。

 

 

(1) デシル分析

デシル分析は比較的簡単な分析手法として知られています。対象のデータは業種業態によって異なりますが、一般的には購入金額の高い順から10グループにセグメンテーションし売上構成比率を分析します。
「パレートの法則※1」が成立しているかどうかを確認するのに、非常に見やすく分かりやすい指標です。この指標により、現在保持している顧客の中からロイヤルカスタマー層を把握し、ロイヤルカスタマー向けの施策を展開できます。

 

※1:全ての物事は8対2の関係から成り立っていると提唱されている考え方。・・・「売上の80%は、20%の顧客から生み出されている,企業の売上の80%は、20%の従業員から生み出されている,仕事の成果の80%は、業務時間全体の20%の時間で生み出されている」

 

(2) デシル移動分析

デシル移動分析とは前述したデシル分析の応用版です。

 

前年度上位だった顧客が今年に入ってランクダウンした理由などは、デシル移動分析により明確化されます。対象期間と比べて、前年度はどうなっていたのか? 上位から下位へ移動した状況を把握し、傾向を探ります。もし、ランクダウンしそうなロイヤルカスタマー層の顧客がいれば、その顧客に対して個別のシナリオを発火させるなど、事前に離脱防止の施策が可能となります。

 

(3) RFM分析

ロイヤルカスタマーを判断するのに有効なものに、RFM分析と呼ばれる手法が存在します。

 

R : いつ買ったか (Recency)

F : どのくらいの頻度で購入しているか? (Frequency)

M : いくら購入しているか(Monetary)

 

これら3つの顧客定量データをもとに順位付けを行うことにより、ロイヤルカスタマーや離脱顧客など簡単にセグメンテーション化することができます。ランクの高い顧客は、最近購入する頻度が高く、たくさんお金を使ってくれる「優良顧客」と判断できます。
また、必ずしも3つの指標を使わなければならないという訳ではありません。R×M や F×M といった組み合わせでも十分に効果のある分析が行えます。RFM分析によってグルーピングされた顧客に対し適切な配信を行うことができるので、マーケターに重宝されています。

 

ただし、すでに保持している定量データからの分析となるため、初回購入がそれほど高額でない顧客などはRecencyの項目だけが突出し、その他のFrequencyとMonetaryの項目が低ランクとして評価されてしまうこともあります。

4. 情報伝達手段の多様性とリードナーチャリング

前述したように、現在は様々なコミュニケーションチャネルが存在します。全てをカバーできている企業は非常に稀ですが、コミュニケーションチャネルが多いほど、顧客とのタッチポイントが多くなるということになります。
しかし、まずは自社に合ったコミュニケーションチャネルを精査して注力した方が効果的です。そして、見込み顧客をナーチャリング (育成) し、自社の魅力をどんどん発信していくことがこれからのWebマーケティングに求められています。
現在最も注目を浴びているコミュニケーションチャネルは「デジタルメディア」でしょう。
ポータルサイトはもちろん、自社ECサイト、SNSでおなじみのfacebook、instagram、twitterなどもデジタルメディアに分類されます。
では、なぜ今注目を浴びているのでしょうか?

 

  • 低コスト
  • 双方向のコミュニケーションが可能
  • 拡散しやすい (SNSにおけるシェア機能など)
  • 距離などの制約がない (伝達コストが一定)

 

他にも付随するメリットが数多く存在します。

 

「EメールやSMS、LINEなどによる一斉配信」、「コンシューマー同士でのシェア・拡散」、そして双方向のコミュニケーションによる「キーワードなどを識別した自動対応」も可能です。
「炎上」というデメリットも存在しますが、しっかりとした運用を行えばこうした心配もまずありません。常に顧客目線に立ち、顧客に寄り添ったシナリオ設計、顧客のニーズに即したコンテンツ作りをすることにより、多くの顧客を自社のファンに育て上げるロジックが完成するのです。

 

5. まとめ

デジタルマーケティングの世界は、技術の進歩と比例してどんどんと広がっています。
顧客分析と最適な情報伝達手段を組み合わせることで、より効果的なマーケティングを実現することができます。しかし、MAを駆使した顧客分析やシナリオ設計などは、それなりのデジタルマーケティングにおける知見が必要です。様々な顧客分析の特徴や、各シナリオにおける特性などをしっかりと理解することで、自社製品に合った最適な顧客体験を必ず作り出せます。
今後のMAシステムは、これまで以上に多くの人に理解され、多くの人の役に立ち、もっともっとデジタルマーケティング業界を盛り上げてくれるでしょう。