EC事業におけるLTVの重要性とは?ECサイトのLTV算出とツール活用メリットも解説

顧客生涯価値を意味するLTV(Life Time Value)。市場の成熟や商品・サービスのコモディティ化などの影響で新規顧客の獲得が困難な今、あらゆる業種で重視される指標の一つです。EC事業においてもLTVは重要で、効果的な広告活用に欠かせない指標といえるでしょう。
 
本記事では、特にECを行う事業者様に向け、LTVの重要性から算出方法、ツール活用のメリット・デメリットなどを解説します。広告費の高騰や既存顧客維持に課題を抱えている事業者様はぜひ参考にしてください。

LTVとは?

LTVとは、一人の顧客が一生の間に特定の企業やブランドにもたらす利益を指すものです。LTVを算出することで、顧客一人に対する利益額がわかるため、そこから販促費や広告費をどれだけ掛けられるかの予測が可能になります。

 

LTVは業種を問わず、マーケティング施策を行う際の重要な指標の一つとなっていますが、その背景にあるのは新規顧客獲得の困難さです。

 
マーケティング業界では、新規顧客獲得にかかるコストは既存顧客維持にかかるコストの5倍かかる1:5の法則というものがあります。つまりコストを抑えつつ利益を高めるには既存顧客の維持が重要であり、そのための指標としてLTVが必要とされているのです。

LTVの算出方法

LTVを算出する主な方法は、複数のマーケティング指標から算出する方法もしくは会社全体の利益から算出する方法の2つです。ここでは、それぞれの方法について解説します。

複数のマーケティング指標から算出方法

平均購買単価や粗利率、購買頻度など複数のマーケティング指標から、顧客一人の獲得により自社が得られる利益を算出する方法で、計算式は次のとおりです。

(平均購買単価 × 粗利率) × 購買頻度 × 顧客の継続購買年数=LTV

たとえば、平均購買単価が5,000円で粗利率が80%、平均購買頻度が8回、継続購買年数が3年の場合、LTVは次のようになります。

(5,000円×80%)×8回×3年=96,000円

この式から顧客一人の獲得で得られる利益は96,000円。仮に新商品を発売して100人が購入した場合、今後3年間で960万円の利益を得られると予測できます。

会社全体の利益(粗利)から算出する方法

LTVを算出するもう一つの方法は、会社全体の利益から算出する方法です。上述した複数のマーケティング指標から算出するよりも簡易的な方法で、主におおまかな数字を知りたい際に利用されます。計算式は次のとおりです。

(売上―売上原価)÷購入者数=LTV

たとえば、1年間の売上が1,000万円で売上原価が600万円、購入者数が800人の場合、LTVは次のようになります。

(1,000万円―600万円)÷800人=5,000円

この式から顧客一人当たりの1年間のLTVは5,000円となります。この方法は期間を区切ったLTVの算出が可能で、半年や四半期で区切った場合のLTVを知りたい際にも利用できる方法です。

LTVとCPA(顧客獲得単価)の関係性

LTVを高めることが企業全体の利益向上につながるのであれば、顧客獲得にできるだけコストをかければよいことになります。
 
しかし、コストをかければかけるほど利益は減少するため、一人の顧客獲得にどれだけコストをかけられるかは必ず把握しておかなくてはなりません。そこで重要になるのがCPA(顧客獲得単価)です。
 
CPAとは、「Cost Per Action」もしくは「Cost Per Acquisition」の略称で、一人の顧客を獲得するためにかかる費用を指します。ここでいう費用とは、広告宣伝費のことで、顧客獲得のためにどれだけ広告宣伝にコストを割けるかを知るために欠かせない指標で、計算式は次のとおりです。

広告宣伝費÷コンバージョン(購入達成)数=CPA

たとえば、ある商品の広告宣伝に100万円を使い、200人に売れた場合のCPAは500円になります。
 
CPAがわかれば、LTVを高めるには最大でどれだけのコストをかけられるかも一目瞭然です。つまり、マーケティングの指標としてLTVを利用するのであれば、必ずCPAもセットで考えなくてはなりません。

LTVとCPAを用いた「限界CPA」の求め方

利益を向上させるには、全体の売上や予算比だけで見てしまうと曖昧になり、広告宣伝費が適切に使われているかがわかりにくくなります。そこでCPAが必要になりますが、CPAのなかでも把握しておかなくてはならないのが、「限界CPA」です。

限界CPAとは、広告宣伝費を使える限界の金額を算出する際に使用するもので、CPAの金額が限界CPAを下回っていれば黒字、上回っていれば赤字になります。そして限界CPAは、LTVを用いて算出することが可能で、計算式は次のとおりです。

LTV×粗利率=限界CPA

たとえば、LTVが5,000円で粗利率が50%の場合、限界CPAは次のようになります。

5,000円×50%=2,500円

この結果から、広告宣伝費は2,500円までで抑えれば黒字になり、2,500円を超えてしまうと赤字です。もし1,000円の広告宣伝費で顧客獲得ができれば、さらに広告費を増やし、より多くの露出を行う。3,000円かけても顧客獲得ができなければ、広告内容の改善もしくは撤退の検討をするといったことが可能です。
 
限界CPAを把握していれば、広告宣伝費の調整が可能になり、赤字が発生してしまうリスクを最小限に抑えられるようになるでしょう。

EC事業で「LTV」と「限界CPA」を可視化する重要性

以前に比べ新規顧客の獲得が困難な今、LTVと限界CPAの把握は業種に関わらず重要な指標です。そして、EC事業においては、1円単位で広告宣伝費を管理できるため、LTVと限界CPAの可視化により効果的な広告宣伝活動が可能になります。
 
特に広告の予算組みや入札競争時には、可視化の有無で大きな差が生じてしまうでしょう。その理由は次のとおりです。

適切な広告予算が組める

LTVを算出し、限界CPAを可視化させていれば、商品一つひとつの広告にどれだけの予算(CPA)がかけられるかが一目瞭然です。
 
当然ながら商品は価格帯や人気などにより一つひとつ限界CPAは異なります。たとえば、Aという商品の限界CPAは3,000円、Bという商品の限界CPAが5,000円の場合、広告費に4,000円かけると、Bは利益が出ますが、Aは赤字です。
 
EC事業では企業やブランド全体で広告を出すケースもありますが、商品ごとに広告を出稿するケースも珍しくありません。そのため、商品一つひとつの限界CPAを可視化させておけば、それぞれで適切な広告予算を組めるようになります。
 
逆に限界CPAの可視化ができていないと、5,000円まで広告費を使えるにもかかわらず、3,000円かけた段階で成果が出ずに出稿を止め、販売機会の損失を招く可能性も高まるでしょう。

入札競争で競合に競り勝てる

LTVの算出による限界CPAの可視化は、入札競争においても大きな役目を果たします。限界CPAを可視化していれば、広告を出稿する際に設定する入札単価(CPC= Cost Per Click:広告を1回クリックする際の上限金額を決定する単価)の適正と限界の把握が可能です。
 
そのため、リスティング(検索連動型)広告において、自社が出稿した広告の表示順位を見たうえで、入札単価の引き上げもしくは引き下げの判断を適切に行えます。
 
仮に競合が同じキーワードで広告を出稿している場合でも、赤字になるかならないかの限界点を見極めながら入札単価を調整でき、競り勝てる可能性も高まるでしょう。
 
もちろん、撤退の判断も適切に行えるようになるため、一定のシェアを取りつつ、赤字になってしまうリスク低減も可能です。
 
逆に限界CPAを可視化できていないと、勝負どころや撤退のタイミングがつかめず、上位表示ができないばかりか、赤字になっても勝負してしまうリスクが高まるでしょう。

ECサイトのLTVを可視化する方法

EC事業者が自社のECサイト運営において、LTVを可視化させる方法はいくつか考えられます。主なものとしては、Google Analytics4の「eコマーストラッキング」を使う方法。そして「CRM/MAツール」を使う方法の2つです。
 
ただし、どちらの方法もメリットとデメリットをしっかりと把握していないと十分な成果を上げるのは難しくなります。ここでは、それぞれを使ってLTVの可視化させる方法とメリット・デメリットを見ていきましょう。

Google Analytics4の「eコマーストラッキング」を活用する

Google Analytics4では、eコマーストラッキングを活用することでLTVの可視化が可能で、得られるデータは次のとおりです(すべてユーザーあたり)。

  • ・アプリビュー数
  • ・目標の完了数
  • ・ページビュー数
  • ・収益
  • ・セッション継続時間
  • ・セッション数
  • ・トランザクション数

これらの指標を集客チャネルやキャンペーンごと、最大90日間で確認できますが、その方法は次の手順で行います。

  • 1.管理画面にログインし、左側メニューから「ユーザー」をクリックし、「ライフタイムバリュー」を選択
  • 2.画面下部に表示される「集客チャネル(検索・ソーシャル・直接訪問など)」もしくは「集客キャンペーン(広告)」から1つもしくは複数を選択
  • 3.表示された結果から「ユーザーあたりの収益(LTV)」をクリックすることで、集客力がありユーザーあたりのLTVが高い項目の確認ができます。

ECサイトのLTV可視化にGoogle Analytics4を活用するメリット

ECサイトのLTV可視化にGoogle Analytics4を活用する最大のメリットは、無料であることです。また、ECサイトを運営している事業者のほとんどがアクセス解析にGoogle Analytics4を使っているため、管理が楽に行えるのもメリットといえるでしょう。
 
ほか、副次的なメリットとして、Google Analytics4に搭載されているユーザー分析機能やコンバージョン機能などの活用により、LTV以外のマーケティング指標も可視化できます。

ECサイトのLTV可視化にGoogle Analytics4を活用するデメリット

LTVの可視化にGoogle Analytics4を活用するデメリットは、操作方法を把握していないと正しいLTVが計測できない点です。
 
Google Analytics4でeコマーストラッキングを使い、さまざまな指標のLTVを可視化させるには、イベントトラッキングの設定が必要になります。そのため、ECサイト担当者がGoogle Analytics4の操作に慣れていないと詳細な設定ができず、LTVの計測もできません(Google Analytics4ではデフォルトイベントが自動計測されますが、自社独自のイベントを作成する際は設定の知識が必要)。
 
EC担当者は、ECサイトの運用や広告の運用管理などやるべき作業も多く、さらにGoogle Analytics4でイベントトラッキングの設定も行うとなるとかなりの手間がかかります。
 
さまざまな作業を効率的に行うには相応の準備と学習が求められるため、特に少ない人数で回している場合は、Google Analytics4のeコマーストラッキング活用は難しいかもしれません。

「CRM/MAツール」を活用する

ECサイトでLTVを可視化させるもう一つの方法は、CRM/MAツールの活用です。種類にもよりますが、多くのCRM/MAツールにはLTV分析機能が搭載されています。
 
計測は、測定コードをECサイトに設置するだけで、LTV算出に必要な指標に絞って自動で抽出が可能です。
 
また、LTVは既存顧客維持という観点からサブスクリプションや定期購入を採用しているECサイトでより重要な指標となっています。そこで、定期購入でのLTV分析が行える機能を搭載したCRM/MAツールも増えています。

ECサイトのLTV可視化にCRM/MAツールを導入するメリット

LTVの可視化にCRM/MAツールを活用するメリットは、同じシステム・ツール上で売上改善につながる施策を実行できる点です。
 
基本的にEC事業者がCRM/MAツールを導入する目的は、売上改善・コスト最適化・手間の軽減などが挙げられます。LTVの可視化を行うことで、同時に売上改善につなげられる施策を連動させて実施できるのは大きなメリットといえるでしょう。
 
もう一つのメリットは、Google Analytics4に比べ運用管理の手間がかからない点です。上述したように、担当者の手間軽減もCRM/MAツールを導入する目的のため、EC事業に必要な作業は極力手間をかけずに行えるように設計されています。
 
管理画面の見やすさや操作性の良さ、レポート抽出の容易さなどは、Google Analytics4と比べてもかなり魅力的な部分であり、CRM/MAツールのメリットです。

ECサイトのLTV可視化にCRM/MAツールを導入するデメリット

ECサイトのLTVの可視化において、CRM/MAツールのデメリットは基本的にはありません。
 
LTVの可視化もこれらのシステム・ツールには必須の機能であるため、デフォルトで搭載されているケースがほとんどで、カスタマイズもほぼせずに利用可能です。ただ、Google Analytics4のように無料では使えないため、導入や利用にコストがかかる点はデメリットといえます。
 
もう一点、挙げるとすれば種類によって機能や操作性が異なる点です。新たに導入する際は、自社に必要な機能が搭載されているか、サポート体制は十分か、自社の担当者でもすぐに扱えるかなどはしっかりと確認しなくてはなりません。
 
成果を上げるためには、情報収集を行い自社に最適なCRM/MAツールを導入することが重要です。

LTVが定期通販・D2C事業で特に重要視される理由とは?

ECにおいてLTVが重視される理由は、前段でも挙げたようにサブスクリプションサービスや定期通販を導入するケースが増えている点が挙げられるでしょう。
 
これらのビジネスモデルでは、新規顧客獲得以上に既存顧客維持が利益向上の重要ポイントになるため、その指標となるLTVが重視されています。
 
また、現在はECでD2C事業を開始する企業が増加しているのもLTVが重視される理由の一つです。D2Cとは「Direct to Consumer」の略称で、製造業者が小売店を挟まず、直接消費者に販売するスタイルを指します。
 
小売店を挟まないため、収益性が高いうえに自社ECサイトで自由に販売ができるメリットがあり、多くの製造業者がD2C事業に参入し始めています。
 
EC業界ではD2Cという新たなプレイヤーの参入が、新規顧客獲得をこれまで以上に難化させたことで、既存顧客の維持がより重視されるようになりました。
 
そのため、既存顧客の維持を高め、新規顧客獲得のコストを最大化させることがECで生き残るポイントとなり、LTVの重要性が高まっているのです。

まとめ|定期通販・D2C向けのCRM/MAツールなら「MOTENASU」がおすすめ

EC業界では、さまざまなプレイヤーが新規参入していることから、新規顧客獲得がこれまで以上に難しくなっています。そのなかで生き残っていくためには、広告宣伝が欠かせませんが、どの程度までコストをかけるべきかがわからなければ適切な施策も実行できません。そこで重要となるのが「LTVの把握」です。
 
自社のLTVを可視化させ、そこから限界CPAを算出すれば適切な広告宣伝費管理が行え、機会損失や赤字転落のリスクの大幅減少を実現します。LTVを可視化させる方法はいくつかありますが、LTVを可視化させ、さらに効率的なECの運用管理ができるCRM/MAツールの活用がEC成功の鍵を握ります。
 
弊社が提供する定期通販・D2C対応のCRM/MAツール「MOTENASU」なら、LTV分析はもちろん、効率的なEC運営に欠かせないRFM分析やCPO分析、定期引き上げ分析などの高度分析機能を搭載しているため、顧客データを様々なEC施策で活用可能なデータとして変換できるメリットを持っています。
 
また、LTVを把握した後に重要となるのが「顧客一人ひとりに行う適切なタイミングでのアプローチ」です。MOTENASUならメール、LINE、SNSなどのオンラインアプローチはもちろん、郵送DMのオフラインアプローチも可能で、顧客のアクションによって適切なチャネルを使い分けできます。シナリオ作成も容易に設定できるため、CRM/MAツールの利用が初めての方であっても設定・計測の手間はかかりません。

分析機能により顧客データを施策活用可能なデータに変換しつつ、そのデータをセグメント化した上で、顧客1人ひとりに合わせたOne to Oneマーケティングが実施できるMOTENASUは、顧客管理・分析・マーケティング自動化を兼ね備えた一石三鳥のツールといえます。
 
ただし、EC運営でユーザーと接触するECサイトのUIがユーザーのニーズに沿っていなければ、どれだけ多機能なCRM/MAツールを導入してもEC運営は改善されません。EC運営担当者はCRM/MAツールの導入を検討すると同時に、ユーザー目線の使いやすいUIが実装されたECカートシステムの利用も検討しなければならないのです。
 
弊社が提供する定期通販・D2C特化型のECカートシステム「侍カート」なら、ユーザーの購買シーンの手間を省いて2クリック注文を実現する「フォーム一体型LP」や、購入直前に定期購入のお得さを訴求する「アップセル機能」がデフォルト搭載されています。
 
CRM/MAツール「MOTENASU」と連携すれば、単品購入ユーザーの購買データを分析し、定期購入引き上げの最適なタイミングが把握でき、かつ設計したシナリオ配信にしたがって自動アプローチを実行できます。
 
ECカートシステムと上手く連動しないCRM/MAツールでは、施策ごとに担当者が手作業で対応する場面が増え、非効率な運用となってしまいます。CRM/MAツールを導入する際は連携可能なECカートシステムを選び、顧客獲得から分析、リピーター醸成までの流れを1つのシステム上で運用することが重要です。
 
LTV分析に留まらず、効率的な施策運用、EC売上アップを図りたい事業者様はぜひCRM/MAツール「MOTENASU」と、定期通販・D2C特化型のECカートシステム「侍カート」をご検討ください。
 
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