CRM/MAを導入して失敗してしまった事例とはどんなものか?
今回は、CRM/MAの導入に関わる失敗例をテーマについて、以下の目次に従い概説します。
改めて失敗の事例が多いことに気がつきました。但し、成功・失敗の基準をどこにおくか、また、どの観点から見るかによって、景色は違います。
CRM単体の場合、MA単体の導入の場合につき、その原因などを含め概説します。デジタルマーケティングの基幹システムである統合型CRM/MAの成功例が増えるよう、成功へのカギを模索していきたいと思います。
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はじめに
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2年ほど前のハーバードビジネスレビューという雑誌に、”why CRM projects fail and How to make them more successful” (2018年12月20日付)というタイトルで、アメリカのCRMでの導入失敗事例に関する記事が掲載されていました。“メインユーザーはCRMをビジネス拡大の為に正しく使っていない。ユーザーに対する教育不足もあり、CRMの導入のほぼは9割近くが失敗である”という内容です。
CRMの失敗は基本企業内の問題として処理できます。
他方、MA導入の失敗は消費者に絡む問題に発展するケースが多く、EC企業・業者の死活問題に発展する可能性がある点、留意が必要です。まず、CRMから始めさせて頂きます。
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CRM単体のケース
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理想型CRMは失敗例の代表格
1990年初頭、法人営業の分野で 次のような理想型CRMの導入がブームとなりました。但し、現実とのギャップの存在から直ぐに幕を閉じてしまいました。
• 企業と関わり合いのある全ての企業・業者の情報が一元的に管理されていない。売りサイドのセールスや買いサイドのバックオフィスだけでなく全ての部門で情報の共有ができていない。共有できれば、売りと買いの両サイドで同一の企業・業者を取引相手とする場合、セールス交渉を効率的に進めることができる。
• 取引の交渉がスムーズに運べばセールスサイクルの短縮、セールスに関わる人材の効率的な活用が可能となる。
• 結果、売上が伸び、顧客をベースとするビジネス・収益の拡大につながる。CRM導入の失敗原因
上記で紹介した“CRMの導入は9割近くが失敗である”という記事ですが、成功か失敗かの基準を“ビジネス拡大に資する正しい使い方”としています。以下はその概要となります。
• “CRMはビジネスの拡大に貢献しているか”という観点でビジネスのトップにインタビューすると、次を理由に、ほぼ9割近くがNOと回答している。
o 目標の達成度
o 予算オーバー
o データの不備
o 技術上の限界
o ユーザーからの不協和音等
• CRMは、営業の進捗レポート、営業予測レポートなどの営業関連の検証用レポートの作成用にしか使われていない。
• セールスプロセスの改善には役立っていない。
• セールス部門が正しくCRMを使う必要があり、その為にはユーザー教育が必要である。
• 同時に、CRMは決して検証レポート作成の為のシステムではない点徹底させる必要がある。理想型CRMを追求する場合、30年経った現在でも、ほぼ失敗すると読み替えてもいいかと思います。
CRMの成功の鍵は機能の絞込み
同記事の中で、米国の著名なビジネス誌CIOを引用し、失敗例は“18%から69%と幅がある”と言及しています。
CRMを理想形ではなく、基準をより現実的なものにすると8割近くに引き上がるとも言えます。
成功例となるCRMは分析型と実行型に大別できます。
• 分析系 (Analytical) CRMは、データマイニング、テキストマイニング、映像分析などの手法により、顧客の行動や収益性、対応プロセスなどを分析し、その効率化に重点をおくものです。
• また、実行系 (Operational) CRMの特徴ですが、顧客とコミュニケーションプロセスの改善を目的としたもので、次が有名です。
o Sales Force Automation (SFA) – 顧客との交渉状況、案件の進捗状態、営業成果の達成状況をカバー。
o Service Automation – コールセンター、FAQやナレッジベースなどにより、カスタマーサービスのクオリティー向上を目指す。音声、Eメール、チャットなどのチャネルの充実、顧客応対の履歴もデータ化も含む。
o Marketing Automation – 初期のMA。顧客区分毎に設定したアプローチやアクションの自動執行。また、リードナーチャリング等による営業初期段階の支援を目指す。 -
MA単体のケース
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MAの失敗事例ですが、まず、消費者サイドが直面する課題から概説し、次に主たる失敗原因を概説します。
迷惑メールが示唆する様々なMA設定上の致命的な課題
失敗例の代表として話題に上がるのが、以下のような迷惑メールという問題です。
“一般のユーザーがEC業者のHPを訪れると自動的にメールが発信されてきます。
明らかに自動配信だとわかるような文面で、それも不思議な時間帯に送られてきます。
興味の湧かない商品の紹介で、コンテンツの内容に不満を感じ、“メール不要“としても配信は止まりません。
当然、迷惑メールあるいはフィッシング詐欺やウイルス攻撃を目的としたメールと理解し、開封もせず、迷惑メールのフォールダーに自動仕訳するようルールを設定し、定期的に削除します。
安全の為、二度と、このEC業者のサイトを訪問しないようにします。“これは、マーケティング効果が疑わしいMA設定上の問題として、簡単に片付けられない問題の一例です。その背後には致命的な課題の存在を示唆しています。
• CRMのユーザーデータのアップデートや見直しがなされていない。
• 顧客・見込み顧客の嗜好分析がなされていない。
• 顧客・見込み顧客のセグメンテーションが適切に行われていない。
• ターゲット顧客・見込み顧客が全て同一に扱われ、One-To-One的な扱いがなされていない。
• セグメント毎のコンテンツマネージメントが適切に行われていない。
• メールの開封・非開封の分析がなされておらず、対応策が講じられていない。
• 顧客データの保護・保全策が講じられているかわからない。MA導入の失敗原因
MAの失敗事例の中で、約10年前の記事ですが、スタートアップ企業(従業員40名程度)が最先端のMAの導入を計画したものの、現場が混乱するうちに失敗し、最後には倒産したという事例がありました。示唆する点が多く、以下紹介します。
• MA導入の目的が不明確:MAの豊富な機能のうちどの機能を利用し、何を達成したいかという具体的な目標設定が不明のまま導入が開始された。
• MAの対象となるマーケティングプロセスが不在:スタートアップ企業だったこともあり、MAの処理が必要となるほどの見込み顧客が少なく、マーケティングプロセスが存在しなかった。また、顧客開拓は、既存の顧客からの紹介に基づく、訪問外交が主体で、MAを利用するだけのビジネス規模ではなかった
• セグメント化・コンテンツの不備:HPやホワイトペーパーはあったが、顧客・見込み顧客の数や階層数が少なく、MAの設定上必要となるセグメント化や対応するコンテンツの用意ができなかった。
• マーケティング及びMA用の専任スタッフの不足:マーケティングスタッフはおらず、他部門と兼任であった。MAを動かすためのデータ登録用の専任スタッフやITサポートスタッフ、システムパートナーが別途必要であることを認識していなかった。
• 営業活動とMAによるマーケティング対象の境界が不明:顧客・見込み顧客とのコミュニケーションをどのように営業とMAとの間で切り分けるか、その線引きが共有できていなかった。
• MAに関する理解不足:MAを見込み顧客専用としてだけでなく、既存の顧客に対しても利用できる利点に気がつかなかった。
• HPとのシステム統合のための追加費用:MAとの相性が悪く、追加のシステム開発費用が必要となった。
• Email一辺倒のコミュニケーション:顧客・見込み顧客とのコミュニケーションをEmailだけに限り、動画配信、メッセージなどのチャンネルを無視し、顧客・見込み顧客が欲するコミュニケーションチャンネルの準備を怠った。 -
まとめ
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CRMの導入目的を“ビジネス拡大に資する為”と限定するとほぼ失敗に終わっています。
また、MAの導入の失敗事例を検証すると、MAを導入すれば、魔法の箱のように顧客・見込み顧客リストが簡単に作成され、効果的なデジタルマーケティングが可能となるという幻想に包まれているような印象があります。
CRMやMAを動かす為には、システム内の各種パラメーターの設定・データの精度を上げる必要があります。
定期的に、迷惑メールになっていないか、コンテンツは適切か、顧客データの保護は確保されているか等の問題の洗い出し、検証、改善を行う必要もあります。
HPあるいは既存の在庫管理システム、決済・会計システム等とのある程度のシステム統合の検討も必要となります。
その為の専任スタッフやITサポートスタッフあるいはシステムパートナーが必要となる点、留意すべきです。こうした失敗時事例を参考にし、以下の点を十分考慮すればデジタルマーケティングの基幹システムの導入の成功率は格段に上がり、ECビジネスの拡大・維持に繋がると予想できます。
• 統合的CRM/MAをベースにした具体的かつ限定的な導入目的の設定
• One-To-Oneマーケティングや最優良顧客への営業活動と線引きの明確化
• 定期的な効果分析・検証・修正作業の実施
• 周辺システムとのある程度のシステム統合の検討
• 専任スタッフやITスタッフあるいはシステムパートナーの確保
• 成功体験を社員全員で共有し、CRM/MAのカバレッジの拡大の検討
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