定期通販(単品リピート通販)におけるLTVの重要性と算出方法について

定期通販(単品リピート通販)において、LTVは重要な指標の1つです。顧客と長期的に良好な関係を築いて利益を伸ばしていくビジネスモデルでは、顧客を囲い込んで優良顧客化してLTVを最大化することが、成功の鍵となるからです。

 

そこで本記事では、定期通販におけるLTVの重要性、LTVの計算式、ExcelやCRM/MAツールによるLTVの管理について解説します。あわせて定期通販に向くECカートシステムやCRM/MAツールも紹介していますので、LTV向上施策の参考にしてください。

定期通販におけるLTVの重要性

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、顧客が取引開始から終了までに支払った金額です。このLTVが定期通販で特に重視される理由を知らない方も多いのではないでしょうか。

定期通販でLTVが重要視される理由として挙げられるのが、定期通販のビジネスモデルでは、初回販売金額が低く、2回目以降の購入が通常価格で販売されることが多いからです。定期通販では初回購入をトライアル価格などで引き下げることで、ユーザーを多く取り込み、中長期でユーザーから利益を得ようとします。そのためユーザーが1回ごとに購入した金額を計測するよりも、LTVを計測した方がマーケティング施策に活用するデータとして適切といえます。
 
また、定期通販では「リピーターとして定着してもらえるかどうか」が業績を大きく左右するため、1回ごとの購入金額や短期的な売上よりも、継続利用期間や購入金額、購入頻度を含めて総合的に評価するLTV分析の方が売上改善に影響しやすくなります。
 
定期通販でLTVが重要視される理由として2つめに挙げられるのが、定期通販の競合相手が増えたため、LTVに着目して顧客を囲い込む重要性が高まっていることです。近年はさまざまな業種でサブスクリプションモデルが取り入れられており、それらをベースにしたD2C事業も増えています。また、ネットショッピングが手軽になった現在では、定期通販ではなく、都度ECサイトで購入すればよいと考える人も少なくありません。
 
このような市場環境の中で顧客に定着してもらうためには、LTVの分析によって顧客ニーズや行動パターンを分析し、費用対効果の高いアプローチを行うことが重要になってきます。

LTVの算出方法

業界や業態を問わず一般的にLTVを算出する方法は2つあります。  
顧客ごとのLTVを細かく算出したい場合には、以下の計算式を用います。

LTV = 顧客の平均収益 × 購買頻度 × 顧客の継続購買年数 =(平均購買単価 × 粗利率)× 顧客の継続購買年数

例えば、以下の条件であった場合のLTVは以下のとおりです。

  • ・平均購買単価:2,000円
  • ・粗利率:90%
  • ・購買頻度:5回
  • ・継続購買期間:3年

LTV = (2,000円 × 90%)× 5回 × 3年 = 2万7,000円
つまり、顧客1人を獲得すると2万7,000円の利益を得られるとわかります。
 
次に全体的なLTVを粗くとらえたいときは、以下の計算式を用います。

LTV = 売上総利益 ÷ 購入者数 = (売上高 – 売上原価) ÷ 購入者数

 
こちらの計算式は、どの業界・業態でも簡単に当てはまるため、よく使われています。上記の計算式には期間がありませんが、通常は期間を設定して計算します。商材やビジネスモデルによっても異なりますが、12カ月で区切るのが一般的です。
 
例えば下記条件であった場合のLTVは、以下のとおりです。

  • ・過去12カ月の売上高 :1,000万円
  • ・過去12カ月の売上原価:700万円
  • ・過去12カ月の購入者数:100人

LTV =(1,000万円-700万円)÷100人=3万円
この場合、顧客1人ごとに3万円の利益を得られるとわかります。

定期通販で算出するLTVは2種類

定期通販でよく用いられるLTVは以下の2種類です。

  • ・商品全体のLTV = 売上総利益 ÷ 購入者数 = (売上高 – 売上原価)÷ 購入者数
  • ・各商材のLTV =(初回単価 × 1月目購入件数 + 2~n回目の単価 × 1月目購入者の2~n回における残存者数)÷ 初月購入人数

1つめの計算式は、前述した一般的なLTVの計算式と変わりません。2つめの計算式は定期通販特有の販売方法で正確なLTVを出すために考案された計算式です(具体的な計算例は後ほど紹介します)。
 
この2種類の計算式は、次のように使い分けられます。
 
商品全体のLTV
事業全体のLTVを算出したいときに使います。具体的には、全体の広告費や顧客維持に必要な費用などを算定するために使われるのが一般的です。
 
各商材のLTV
商材別にLTVを算出して、成果の出ていない商材を見直したり、成果の出ている商材にかける広告費や維持費を増やしたりするのに活用されます。定期通販では広告費や管理費を抑えたり、大量仕入れで原価を下げたりするために商品数を絞り込みたいケースが多いため、各商材のLTVの計算式がよく使われます。
 
マーケティングを最適化するためには、商品全体のLTVと各商材のLTVを並行して分析することが重要です。木を見て森を見ず、またはその逆にならないためにも、自社のカートシステムや顧客管理システムなどのデータから、常に2種類のLTVを把握できるのが望ましい状態といえます。

定期通販の「各商材のLTV」を算出する際に注意すべき点

各商材のLTVを算出する際には、数字のトリックによって実態を正しく反映できない場合があるため注意が必要です。
先にも紹介したように、各商材のLTVの計算式は以下のとおりです。
 

各商材のLTV =(初回単価×1月目購入件数 + 2~n回目の単価×1月目購入者の2~n回における残存者数)÷ 初月購入人数

 
上記の計算式で求めたいのは、あくまで顧客1人の初回購入から取引終了(任意の期間)までのLTVです。したがって、2カ月目以降の集計に新規購入者を含めてはいけません。

定期通販では、初回購入が割引特典などによって継続購入より安いのが一般的です。このため新たな初回購入者を含めて計算してしまえば、LTVが実態より低くなってしまいます。
 
定期通販で各商材のLTVを正しく計算するには、顧客ごとに初回購入の履歴を調べて計算しなければなりません。煩雑な計算になるため、顧客情報を一元管理できるCRMツールや、マーケティング業務の一部を自動化するMAなどを用いるのが効率的です。

定期通販の各商材のLTVを算出する方法

定期通販の各商材のLTVを具体的に計算してみましょう。
 
【具体例】

  • ・1月~6月で毎月1回食材が届く定期グルメ便(途中解約可)
  • ・初回単価(1月分):3,000円
  • ・継続単価(2~6月分):6,000円
  • ・LTV集計期間:6カ月

 

単価 残存顧客数 n回目の単価×購入者
1月 3,000円 1,000人(初月購入人数) 3,000×1,000=300万円
2月 6,000円 800人 6,000×800=480万円
3月 6,000円 700人 6,000×700=420万円
4月 6,000円 600人 6,000×600=360万円
5月 6,000円 550人 6,000×550=330万円
6月 6,000円 500人 6,000×500=300万円
合計 2,190万円

 

LTV=(初回単価×1月目購入件数 + 2~n回目の単価×1月目購入者の2~n回における残存者数) ÷ 初月購入人数

=(300万円 + 480万円 + 420万円 + 360万円 + 330万円 + 300万円)÷1000人
=2,190万円÷1,000人
=2万9,000円
 
新たな商材を定期通販する場合は、当然ながら残存顧客数はわかりません。このような場合は「業界平均リピート率」や「過去の類似商材のリピート率」を用いたりします。

仮に上の例でリピート率を0.7と見積もった場合は、2月の残存顧客数は「1,000人×0.7」、3月の残存顧客数は「2月の残存顧客数×0.7=(1,000人×0.7)×0.7」のように求められます。後は前述と同じように計算すれば、将来のLTVを算出できます。

定期通販の各商材のLTVをExcel管理するデメリット

ExcelはLTVを手軽に計算・管理できる方法ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • ・購買データの転記忘れによってLTVにズレが生じる
  • ・LTV算出以外のデータ分析に応用が難しい
  • ・そもそもExcelの関数を組める人が居なければ算出が難しい
  • ・データ更新、担当者変更による引き継ぎが難しい

それぞれ解説します。

購買データの転記忘れによってLTVにズレが生じる

購買データの転記忘れによって、正しいLTVを算出できない場合があります。Excelでは業務システムとの高度な連動はできないため、大部分を手動で作業することになります。このため単純な転記ミスが起きやすくなります。
 
Excelでは複数の人による共同編集にも対応していません。このため一部の人の作業負担が大きくなりがちで、これも購買データの転記忘れやミスが起きやすい要因となります。

LTV算出以外のデータ分析に応用が難しい

Excelでは基本的にLTVを計算して、結果を閲覧するだけしかできないと考えておきましょう。例えば、LTVの高い顧客とひも付けて過去に購入した商品を調べたり、DMを送付した回数を参照したりするような分析は、Excelでは困難です。
 
このような連携分析をExcelの関数やVBAで実装しようとする企業もありますが、規模が大きくなるほど無理が生じます。データが増えると処理が重くなり、分析に時間がかかってしまうでしょう。そもそも個々の端末で会計データや顧客データを扱うのは、情報セキュリティーの観点から望ましくないためおすすめできません。

そもそもExcelの関数を組める人が居なければ算出が難しい

ExcelでLTVを計算するには、関数やVBAのスキルが必要です。顧客の初回購入日で集計を分岐するなど、複雑な処理も求められるため、ある程度の学習時間は必要になるでしょう。
 
インターネット上ではLTV集計用のテンプレートが提供されていますが、これらの多くは「LTV = (売上 – 売上単価) ÷ 購入者数」の各項目を手入力する簡易的なものです。業務システムで各項目がわかれば電卓で計算できる程度ですので、実用面では機能が足りなくなるケースが多いでしょう。

データ更新、担当者変更による引き継ぎが難しい

Excelの関数やVBAを駆使してLTVを計算できるようになったとしても、今度は業務の属人化の問題が生じます。特定の人しかデータ連携や計算の仕組みがわからないブラックボックスの状態になってしまえば、担当者の引き継ぎは困難です。
 
CRM/MAツールの場合では、データフォーマットが変更されたときや集計ルールを変更したい時も、画面操作で設定変更できるため、このような心配はありません。高度な処理を実装したい場合は、はじめからCRM/MAツールを導入した方が効率的です。

定期通販のLTV分析・管理におすすめのツール

前述したExcelのデメリット面を考えると、ある程度の顧客規模になれば、LTVの管理で問題が生じやすいと言えるでしょう。また、LTV向上のための施策につなげにくいのもデメリットです。
 
企業レベルでLTVを分析、管理して、具体的な施策につなげるためには、定期通販特化型のECカートシステムと定期通販対応のCRM/MAツールの導入をおすすめします。

定期通販特化型のECカートシステム

定期通販にLTVの考え方を導入する場合は「定期通販特化型のECカートシステム」を採用するのがおすすめです。主な理由を以下に挙げます。
 
1つめのメリットは、定期通販特化型のECカートシステムを使うと、通常購入から定期購入にワンタッチで切り替えられるボタンを、購入画面に簡単に実装できる点です。これによって、定期購入してもよいと考えていた潜在層を獲得しやすくなります。購入画面に定期通販の割引価格や初回特典などを表示すれば、さらに誘導効果は高まるでしょう。
 
2つめのメリットは基幹システム、顧客管理、分析機能、外部システムと柔軟に連携させられる点です。一例を挙げれば、平均LTVはもちろん、お試し商品から定期商品への引き上げ率や定期商品の継続率、CPOなどを自動的に集計して表示できます。簡易的なアクセス解析や売上集計機能もあるため、専門的な知識なしでレポートを作成できるのも便利です。
 
これらの機能によって、「初期費用を抑えながらLTVを向上させたい」「集計、分析に時間がかかり、具体的な施策に落とし込めない」といった定期通販でよくある課題を解決できます。

定期通販対応のCRM/MAツール

LTV向上施策に欠かせないのが「CRM/MAツール」です。もともとCRM/MAツールは既存顧客を深く理解して、購買頻度や継続購買年数、購買単価を高めるために使うツールですので、LTV向上施策と親和性が高いのが特徴です。
 
多くのCRM/MAツールには、LTVの自動分析機能が備わっています。CRM/MAツールには受注情報が一元的に蓄積されているため、LTVを簡単に算出できます。集計期間や対象とする顧客の条件などは画面操作で設定できるため、プログラムや統計学などの専門的なスキルは不要です。
 
LTV向上のための施策を実行する際も、CRM/MAツールを利用できます。例えばLTVが下がった休眠顧客を抽出してDMを送付したり、LTVの高い顧客に絞ってアップセルやクロスセルのシナリオを適用したりすることでLTVを高められます。

まとめ|定期通販・D2C特化のLTV分析なら「侍カート」「MOTENASU」がおすすめ

顧客と長期的な関係を築いて利益を出していく定期通販では、LTVが重要な指標です。定期通販特有の計算方法もあるため、正しいLTVを算出できるようなシステムを整えましょう。
 
LTVはExcelでも計算できますが、作業の手間がかかるうえに、LTV向上の施策につなげにくい面があります。このため定期通販特化型のECカートシステムや定期通販対応のCRM/MAツールの導入がおすすめです。
 
弊社のCRM/MAツール「MOTENASU」は、LTVを効率的に分析し可視化できるツールです。どのような基幹システムでも簡単手軽に連携できますので、自動的にデータを集めてLTVを更新できます。また、期間や初回流入元などの条件を画面で選ぶだけで、分析したい顧客のLTVを算出できます。
 
また「MOTENASU」なら、オンラインとオフラインを融合したユーザー1人ひとりの購買行動に合わせた「One to Oneマーケティング」が実践できます。One to Oneマーケティングとは、顧客一人ひとりに適切なアクションを行い優良顧客化することで、LTVを最大化する施策となります。MOTENASUなら、例えばハガキで定期購入を申し込んだユーザーに対しては郵送DMでアプローチを行い、パソコン経由で申し込みを行った人には電子メールでアプローチを行うなど、細かなシナリオ分岐が可能です。
 
このようにMOTENASUは高度な分析ツールであるだけでなく、One to Oneマーケティングのためのシナリオ生成ツール、メールや郵送DM、LINEメッセージなどの配信ツールとしても活用できます。一石二鳥、一石三鳥のツールとして、LTV向上のためにご活用いただけます。
 
ただしEC運営には、サイトを訪れるユーザーが使いやすいUIを実現するといった課題や、商品購入時の定期購入へのアップセル訴求などの課題もあります。LTV分析やマーケティング施策の効率化を目的にMOTENASUの導入を検討されているならば、この機会に定期通販・D2C特化型のECカートシステム「侍カート」の併用も、ぜひご検討ください。

 
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