EC事業のLTVを向上させる施策の具体例と意識すべきポイント
自社のECサイトと顧客の関係が良好に保てているか計測するために重要な指標であるLTV。さまざまなEC企業がLTV向上を目標に、多様な施策に取り組んでいます。
一方でなかなか成果が出なかったり、LTVの数値が妥当か見極められていなかったりで悩むケースも。そこで、LTVの基礎的な知識を押さえつつ、実践に役立つ具体的な施策を8つ紹介します。また、自社のLTVが適切か判断する方法も見ていきましょう。
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ECにおけるLTVとは
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LTVとは「Life Time Value」の略で、顧客生涯価値と訳されます。自社ECサイトで買い物する顧客が取引開始から終了するまでの期間に、どれほどの売上または利益を創出してくれるか示す指標です。
つまりLTVが高いほど、顧客が商品やサービスに満足しているといえます。また後述しますが、LTVは新規顧客の獲得コストに対して、適切な売上が確保できているか測るためにも重要です。他の指標と比較することで自社の状況をより正しく把握できます。 -
ECにおけるLTVの計算方法
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LTVの計算式は「売上」「利益」「コスト」のどれをベースとして考えるかによって異なります。
【売上をベースにする場合】LTV=平均購入単価×購買頻度×継続購買期間顧客の平均購入単価や購入頻度などをもとに割り出す、最も基本的な計算方法です。なお「購買頻度×継続購買期間」を「平均購入回数」として以下のようにシンプルに計算する場合もあります。
LTV=平均購買単価×平均購入回数【利益をベースにする場合】
LTV=平均購入単価×購買頻度×継続購買期間×収益率利益ベースで考えたい場合は「収益率」を基本の計算式に掛けます。
【コストをベースにする場合】LTV=平均購買単価×購買頻度×継続購買期間×収益率−(新規顧客1人当たりの獲得コスト+既存顧客1人当たりの維持コスト)新規顧客獲得コスト(CAC)や、顧客の維持コスト(CRC)も考慮したい場合は、利益ベースの計算式からこれらを差し引きます。
なお、「平均購買単価」などの各指標は後ほど説明します。
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EC事業でLTVを向上させる重要性
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「1:5の法則」といわれるように、新規顧客を獲得する難易度は高く、一般的に既存顧客を維持するコストよりも5倍高くなるとされています。
もちろん、自社の成長を考えると新規顧客の拡大は欠かせません。しかし、コストを抑えながら安定した売上を得るには、既存顧客の拡大・維持を重視する必要があるのです。
さらに、成熟市場では、新規顧客獲得コストが増大する傾向にあります。つまり、今いる顧客との関係性をいかに維持するかが、より一層重要なのです。
LTV向上施策は顧客満足度の向上を目指し、自社のロイヤルカスタマーを育てていく施策ともいえます。LTVが高い企業は、顧客の満足度が高いといわれる理由もそこにあるのです。 -
ECのLTV向上施策で目指すべき4つの目標
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これから紹介する4つの目標のうち、いずれかまたはすべてを改善することで、ECにおいてLTV向上を達成できます。では1つずつ見ていきましょう。
購買単価をアップする
平均購買単価とは、顧客1人当たり1回の購入で使う金額の平均値です。購入単価はLTVアップに大きく貢献する指標のため、非常に効果的です。
購買単価を向上させるには下記のような方法があります。- ・クロスセル・アップセルを狙う
- ・商品価格を調整する
- ・LTV目標を「収益」とする場合は原価を調整する
詳細は「平均購買単価・平均購買利益を上げる施策」パートにて解説します。
購買頻度を高める
購買頻度を高めればLTVの向上は可能です。購買頻度とは1年間などの一定期間を基準とし、顧客が商品やサービスを購入する回数のこと。適切な購買頻度や再購入までのスパンは商品ごとに異なります。
自社の商品にあった基準を定めたうえで、下記の方法を検討してみてください。
- ・顧客との接点を増やしECサイトを想起させる
- ・定期購入・サブスクリプションプランの提供を検討する
- ・ポイント制を導入し繰り返し利用してもらう
詳細は「購買頻度・継続期間を向上させる施策」にて解説します。
購買継続期間を長くする
購買継続期間をいかに延長するかも重要です。購買継続期間とは、顧客が初回購入してから、購入を辞めるまでの期間を指します。契約更新不可といった特殊なケースを除き、購買継続期間の延長には顧客との関係性を維持することがポイントとなります。
- ・メールやSNSといったコミュニケーションツールの活用
- ・リピート購入特典などで動機付け
なお、求めていない顧客にしつこく連絡するようなやり方では、かえって逆効果なので注意が必要です。
詳細は「購買頻度・継続期間を向上させる施策」にて後述します。
CACとCRCを最適化する
収益も考慮する場合、新規顧客獲得・維持のコストも忘れてはなりません。
- ・新規顧客獲得単価:CAC(Customer Acquisition Cost)
- ・顧客維持単価:CRC(Customer Retention Costs)
CACは新規顧客獲得に必要な広告宣伝費や人件費を指し、CRCはカスタマーサポート費や、ソフトウェア利用料を指します。
コストカットしにくい部分ですが、CRM/MAツールや高機能なカートシステムを導入することでCAC・CRCを抑える工夫ができます。
詳細は「CACとCRCを最適化する施策」にて解説します。
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ECでLTVを向上させる施策の具体例
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LTV向上につながる指標を改善させるにあたって、どのような施策ができるのでしょうか。それぞれの指標を向上させる方法について解説します。合わせて具体例も紹介しますので、自社での活用をイメージしてみてください。
平均購買単価・平均購買利益を上げる施策
一口に単価アップといえど商品・サービスの売り方、価格そのもの、または原価の見直しなどさまざまな工夫が可能です。
アップセル・クロスセルを促す
「アップセル」とは、購入中・検討中の商品よりも高額な上位モデルを購入してもらう手法。「クロスセル」とは、購入検討中の顧客に他の商品もセットで購入してもらう手法です。
ECにおけるアップセルの具体的な施策として、メルマガやリターゲティング広告などがあります。上位モデルを選ぶ方が満足できる理由を、お得感や品質で訴求しましょう。例えば、これまでのデータから「1年以上継続購入している20代から30代の女性層が上位商品に切り替える傾向がある」というパターンが判明しているのであれば、同じセグメントの顧客に向けて初回購入から1年ほど経ちそうなタイミングでより上位グレードの商品を紹介するメールを送ると効果につながる可能性があります。
ターゲティング広告とは、自社のサイトに訪問したことのあるユーザーを絞り込んで広告を配信する手法です。自社サイトのなかでも上位商品ページの閲覧履歴がある顧客に絞って上位商品を紹介する広告を配信すれば、より効果的にアップセルにつなげられる可能性があります。またECにおけるクロスセルの具体的な施策としては、レコメンド表示で「よく一緒に購入されている商品」を表示する方法があります。
いずれも別の魅力的な商品が必要となるため、商品ラインナップの拡充を検討してもよいでしょう。
商品価格を調整する
商品価格の調整とは商品の値上げです。しかし、単純な値上げは購入数に直接マイナスの影響が出る場合もあり、得策とはいえません。そこで重要なのが、なぜ値上げされるのかしっかり顧客に伝えることです。例えば、品質向上や、新機能の追加、材料費の高騰により価格が上昇しているなどが理由として挙げられます。
また、価格の異なるバリエーションを増やす方法もおすすめです。行動経済学によると「松」「竹」「梅」などの3段階の選択肢を提示されると、中間の「竹」を選びやすいといわれています。例えば、主力として売りたい商品がある場合、あえて機能を絞った代わりに価格を抑えたベーシックモデルと、より豊富な機能を盛り込んで価格も高めたハイエンドモデルも用意し、3種類を顧客に提示するという方法があります。こういった心理学的手法を採り入れるのも1つのやり方です。
商品の原価を最適化する
LTVを利益の指標として算出する場合、原価のコストダウンは粗利額を高めるうえで重要な施策となります。仕入れルートの見直しはもちろん、仕入れ量を増やすことで価格交渉を行うことも必要でしょう。仕入れ卸からではなく、市場や生産者からの直接仕入れに切り替えられるのであれば、原価コストを削減できる可能性があります。LTVを平均購買利益として計算する場合は、平均購買売上として見る場合よりも、要素がやや複雑に絡み合い混乱しがちです。要素を丁寧にブレークダウンし、何が課題なのかを見極めましょう。
購買頻度・継続期間を向上させる施策
購買頻度・継続期間を向上させるためには、「自社ECサイトを想起させること」「継続しやすい売り方を提供できること」が重要となります。
顧客との接点を増やす
顧客との接点を増やすことで、購買頻度・継続期間の向上につながります。
数多くのECサイトが存在している現在、商品を一度購入した顧客ならまた買ってくれるだろうと放置するのはNGです。メールや郵送DM、同梱物などを活用し、顧客との長期的な関係を築くことが欠かせません。
メールであれば、購入直後の購入完了・お礼メールだけでなく、1週間後の商品の到着確認メールや、購入1〜2ヶ月後のリピートメールなどを送るという手があります。郵送DMであれば、前回購入の商品を使い切りそうなタイミングで、リピート割引特典も添えて再購入を促す案内を送付する方法があるでしょう。同梱物であれば、商品説明書だけでなく、「継続購入のお客様の声」「定期購入の案内」といった案内を添えるのも1つの方法です。また、長年利用していない休眠顧客にもこの方法は有効でしょう。例えば、休眠顧客に対しメールでクーポンを配布したとします。するとメールでの接点をきっかけにECサイトを思い出し、アクセスにつながるかもしれません。さらに、商品を気に入っていれば再購入してもらうことも可能です。
定期購入・サブスクリプションプランを提供する
サプリや化粧品など、長期利用で効果を実感できる商品に関しては、定期購入プランがおすすめ。また、一定の料金で一定期間サービス利用できるサブスクリプションも、安定的な収益が見込めるとして昨今注目されているビジネスモデルです。
また、単純に定期購入サービスを始めるだけでなく、契約期間が長いほどお得になるなど長期契約プランを用意すると効果的でしょう。例えば、定期購入商品でも、「2回~5回目の購入までは10%引き」「定期購入6回目を超えると15%引き」「10回目以降は20%引きになる」といった仕組みが考えられます。また、月単位契約の商品なら、「半年契約なら10%割引」「1年契約なら20%割引」というプランを用意するのも手です。
ポイント制の導入
商品購入で一定のポイントが付与される手法は、リピート戦略として多くのEC事業で導入されています。クーポンのように一度限りではなく、商品を購入するごとにポイントが付与されるので、ポイント消化のためのリピート購入が期待できます。
また、同一商品を取り扱うECサイトがあった場合、ポイントの有無で選ばれる確率が高まるでしょう。
さらにポイントに関連したキャンペーンは実施しやすいという特徴も。累計ポイント付与数による特典や、ポイント倍率アップなどの施策は購買頻度向上だけでなく、単価アップにもつながり相乗効果をもたらします。CACとCRCを最適化する施策
CACおよびCRCを最適化するためには業務の自動化が鍵となります。そこで新規顧客獲得・維持を自動化できるツールを紹介します。
CRM/MAツールの導入
ECサイトにおけるCRM/MAツールとは、ECサイト上の顧客の属性・行動データをもとに顧客をセグメント化し、メール送信などのアプローチを自動化できるツールです。集客した顧客を効率よく獲得・維持するには、こういった分析から実際のアプローチまでの業務プロセスを改善することが重要となります。
CRM/MAツールなら、顧客に対する効率的なメルマガ配信や、パーソナライズ化したアプローチを実現可能です。また、開封率などの測定も可能なため、施策精度をより改善できます。
定期購入カートシステムの導入
定期購入を始める場合、定期購入機能があるECカートシステムを導入しなければなりません。一方で、提供する商品の特色ごとに必要な機能は異なり、自社に合うシステムを導入することが課題となります。
具体的には、定期カートシステムによってはLPに定期購入を促すコンテンツ・フォームを簡単に挿入できたり、商品特性や顧客ニーズに合わせて「1ヶ月ごと」「2ヶ月ごと」など柔軟に定期購入期間を設定できたりといった機能があり、自社の商材・顧客ニーズに合わせて必要な機能を搭載しているシステムを選ぶことが重要です。 -
ECにおけるLTV改善施策で注意すべきポイント
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LTV向上施策にはさまざまな手法が存在することが分かりました。一方で、LTV向上という目標を達成するため一貫して注意しなければいけないポイントがあります。ここでは2つの注意点について解説します。
効果を測定しながら実施する
ECに限らず、施策の実施効果を、数値で把握することはマーケティングの大原則です。なぜなら自社にマッチした戦略を模索するためには、客観的データを用いた分析が必要だからです。分析結果から課題を抽出し、施策の調整を行っていくことで自社の成功パターンを見つけられます。
例えばECにおいてメールや郵送DMの開封率を指標の1つとするならば、「顧客はどのキャンペーンに興味を持ってアクションを起こしたか」「興味を持った層はどのような属性か」などを分析します。
ここで活用したいのがCRM/MAツールです。当社FIDが提供する「MOTENASU」は、メール開封率やECサイトへのアクセス履歴、過去の購入履歴などのデータから顧客をセグメント化。適切なタイミングでメール・LINE・SMS・郵送DMなど、顧客ごとに適切なチャネルでリピートを促す案内ができます。
通常、このような作業を手動で行うには膨大なリソース・コストが必要なものですが、「MOTENASU」があればそれを効率化・自動化できるため、コストパフォーマンスよくLTV向上を目指せます。新規顧客獲得とのバランスを考える
LTVの向上は非常に重要ですが、新規顧客獲得にかかるコストとのバランスを考えなければなりません。新規顧客を獲得することが重要なのは間違いありませんが、いくらLTVが高くても、それを上回るCACならば結果的には赤字になります。
一般的には、CACはLTVの3分の1以下になるようにすべきといわれます。もし現状「CAC > LTV」となっているなら、すぐに改善しなければならないでしょう。例えば、今回ご紹介したLTV向上施策を実施しつつ、CACに関して削れる要素がないか再検討します。 -
まとめ
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本記事ではLTVとは何か、その構成要素からECにおけるLTV向上につながる具体的な施策について紹介してきました。一見さまざまな要素が複雑に絡み合った指標のように見えますが、1つひとつ紐解くことで、自社で実施しなければならない項目が見えてきます。
ECにおけるLTV向上施策に活用できるのがCRM/MAツール「MOTENASU」とECカートシステム「侍カート」です。
「MOTENASU」があれば、顧客の属性・購入履歴を基にしたセグメント化や、シナリオに沿ったアプローチの効率化・自動化が可能です。
「侍カート」は、ネット通販の基本機能を網羅的に搭載した通販ECプラットフォームで、アップセル誘導、定期引き上げ、LP(ランディングページ)生成などが容易に実施できます。LPを定期購入フォームと一体化できたり、通常購入の確認画面上に定期購入のお知らせを表示できたりします。これにより顧客は定期購入に移行しやすく、定期引き上げに役立ちます。また、多様な機能が1つのツールで完結するため、迅速なPDCAサイクルが回しやすく結果的にLTV向上の実現に役立つのです。
EC事業においてLTV強化を目指している担当者様は、ご利用をご検討ください。
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