ECにおけるCRM導入の成功事例7選と学べるポイント

EC事業の市場規模が拡大傾向のなか、BtoB・BtoCや種類や商材の区別を問わず、EC事業に乗り出す企業が増えています。一方で、「集客がうまくいかない」「ノウハウが不足しているなど」の理由で苦戦している企業も少なくありません。

 

EC事業で成功を収めるうえで、CRM(顧客関係管理)戦略は不可欠です。本記事では、EC事業におけるCRMの重要性を解説したうえで、実際にCRMの活用によりECで成功を収めた企業の実例をひも解きます。CRM活用のヒントやツール選びのポイントも合わせて解説するので、既存のECサイト運営に課題を感じている方や、今後ECサイト立ち上げを検討中の方はぜひ参考にしてください。

ECにおけるCRMの重要性

CRMは、EC事業において各目標数値の管理や目標実現に役立つ戦略です。
 
そもそもCRMとは、顧客との良好な関係を築くための顧客情報管理の戦略・方針や、それを実現するシステムを指します。一般的には、顧客・会員の年齢や性別、居住地などの属性や、申し込み・入会・購入日時の行動履歴を一元管理し、最適なタイミング・内容でメール配信等を通じて顧客にアプローチする仕組みやツールを意味します。
 
CRMの仕組みを導入すれば、属性データだけでなく、ユーザーの閲覧履歴や購買履歴、滞在時間などをベースに、ユーザーの関心・嗜好を精密に把握できます。CRMのなかには、以下のように高度な分析機能を搭載しているツールもあります。
 

  • ・RFM分析:顧客分析の一種であり、最近の購入日を意味するRecency、来店頻度を意味するFrequency、および購入金額ボリュームを意味するMonetaryの3つの指標で顧客をランク付けする手法
  • ・定期引き上げ分析:顧客が都度購入から定期購入に引き上がる確率を分析する手法
  • ・CPO分析:注文1件当たりの獲得コストを分析する手法

 
さらにCRMは、リードの獲得やCV(Conversion:コンバージョンの略。購入や登録などその施策で達成したい成果)増加、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値の略。1人の顧客が一定期間内に自社の商品やサービスをどのくらい購入・利用したのかを表す指標)最大化、広告運用などを含むマーケティング施策の効率化にも役立ちます。

ECにおけるCRMの主な活用場面

CRMツールが、EC事業でどのように役立つかを知るために、主な3つの活用場面を例に解説します。

顧客データの収集と一元管理

EC運営の第一歩は、まず自社の顧客が誰かを知ることから始まります。顧客の行動や興味関心を知るためにはデータ収集が不可欠であり、CRMツールはデータの収集および分析・管理に役立ちます。
 
CRMツール未導入の場合、顧客情報やデータは、店舗やECサイトなどの各領域に分散されがちです。CRMツールがあれば、収集された行動データをすべて一元管理し、EC部門だけでなく部門の垣根を超えて営業・マーケティング担当者などにも情報を共有できます。
 
CRMツールには、既存の顧客情報以外にも、メールの開封状況やECサイトの閲覧状況、DMの開封状況、無料お試しの有無、実店舗での購買状況などの行動データを収集・格納可能です。
 
収集されたデータは、CRMツールの機能を利用して、グラフや集計数値など、より容易に分析しやすい形で表示できます。さまざまな指標を軸にデータを分析し、新規顧客やリピート客、休眠顧客など、EC事業にとって有意義なセグメント化も可能です。

興味・関心に合わせた施策の実施

CRMツールがあれば、顧客の興味関心に合わせて最適な施策を実施できます。
 
例えば、CRMツールの分析機能を用いれば、通常は手間のかかる顧客・会員のセグメンテーションを容易に行えるので、各顧客・会員の属性や興味関心に合わせてパーソナライズした施策をスムーズに実施可能です。
 
また、高い精度で効率的にクロスセルやアップセルを促進することも可能です。メールやアンケート、SNSなどの接点を通じて、各顧客セグメントの属性に合わせたアプローチも取りやすくなります。
 
さらには、個別顧客ごとに過去の問い合わせ内容やクレーム対応履歴などのデータを活用して商品の改善やサービス内容の向上を図ることで、従来の「一対多数」の関係性でなくパーソナルなアプローチが実現し、顧客満足度やLTVの向上が期待できます。

施策の効果検証と調整

CRMツールは、EC事業で実施した施策の効果検証と調整にも役立ちます。
 
通常、メールやSMSなど複数チャネルでの施策を進める場合、各施策ごとの効果検証を行うのは簡単ではありません。しかしCRMツールを用いれば、チャネルごとの施策の効果検証が容易になります。例えば、キャンペーンの通知に使用したメールの開封率やクリック率、配信したクーポンの利用率、売上の動きなど、細かい指標を計測できます。
 
効果検証を通じて、「メールの配信時刻が、ターゲットが閲覧しやすい時間とずれていた」「キャンペーンページの情報がターゲットの年代層に相応しくなかった」といった課題が明らかになれば、ECサイトのコンテンツや戦略の改善につなげやすくなるのです。

ECにおけるCRM活用の成功事例7選

実際にCRMの考え方を活用して成功をしているEC事業の事例を7つご紹介します。CRM導入の背景や活用方法、導入効果などの点からも掘り下げていきます。

CRM活用事例1.やずや

やずやは、「青汁」や「にんにく卵黄」など、延べ770万人以上の顧客に愛用される商品を世に送り出してきた実績を持つ健康食品会社です。同社では、個々の顧客との長期間にわたる関係維持、つまりCRMの考え方を重視してLTVアップを軸にビジネスを展開してきました。
 
同社が独自に考案した「顧客ポートフォリオ理論」では、顧客を11種類のタイプに分けています。特徴的なのが離脱ステージにある顧客へのアプローチで、「新規離脱」「未開発離脱」「有料離脱」など、離脱そのものにも複数のステージを設けています。離脱ステージごとに分けたコミュニケーションへの注力が功を奏するなどで、同社のEC事業は急成長を遂げました。

CRM活用事例2.DoCLASSE

DoCLASSEは、40代から50代の女性をターゲットに商品を提供しているファッション企業です。インターネット時代に入り多くのカタログ通販ブランドが苦戦を強いられるなか、同社はテレビCMとECサイト、店舗の3メディアのミックス戦略で成長し続けてきました。
 
同社では、従来の新聞広告によりターゲット外のシニア層のボリュームが増え、全体としてのLTV下落という懸念に直面していました。そこで、本来のターゲット層の新規開拓と休眠顧客の掘り起こしに注力するCRM戦略をスタート。新聞広告の予算を減らしてテレビCMにより多くの予算を投入、テレビCMからWebサイトもしくは店舗へと効率的に送客する作戦へと方向転換を図りました。それにあたって各メディアでのデータを連携するCRMの取り組みにも着目。「Web購入商品は店舗でも返品OK」といった施策で来店率を引き上げるなど、OMO戦略(オフラインとオンラインを統合するマーケティング手法)で成功し続けています。

CRM活用事例3.BEAMS

アパレルを含め30以上のレーベルを展開するBEAMSは、2009年に自社ECサイトの開設、2019年に公式サイトとECサイトを統合するなどのデジタルマーケティング施策を推進してきました。国内のアパレル市場全体が人口減少や少子高齢化の影響を受けて縮小傾向にあるなか、同社はECサイトと店舗を統合するオムニチャネル化を通じてより顧客と向き合える組織作りに踏み切りました。
 
元々ファン層からの売上比率が高い同社では、CRMツールを活用した既存顧客分析を通じて、実店舗とECサイトどちらか一方よりも、両方を利用する顧客の年間購入金額が大きい傾向に着目。店舗とECサイトを効果的に連携させる施策として、店舗スタッフからの情報発信を増やしてスタッフのスター化を図るなど、ロイヤリティの高い既存顧客のファン化を推進するカスタマーマーケティング戦略に注力しました。結果、スタッフの投稿を通じての購入がECサイトの売上における6割を占めるにまで至りました。「顧客にスタッフの手書きのメッセージカードを渡す」「店舗スタッフがリアルタイムにWebチャットで接客する」など、精力的なマーケティング施策を展開し続けています。

CRM活用事例4.SABON

ボディスクラブをはじめ、数々のベストコスメアワードに輝く美容商品の開発・販売で成長し続けてきたSABON。顧客の中心は20代から30代の女性です。ブランドの成熟と顧客ロイヤルティ増大が進むにつれてCRM戦略の重要性が増すものの、ECサイト以外に顧客データがほとんどないという問題に直面していました。
 
そこで同社は、店舗とECサイトを統合するOMO戦略へと路線を変更、それまで店舗とECサイトを連係した会員管理を、2018年からLINE公式アカウントを中心に据えたCRMツールに切り替えました。結果、LINE公式アカウント経由の売上が収益全体の3割を占めるまでの成果を獲得しました。

CRM活用事例5.オートバックスセブン

オートバックスセブンは、自動車用品販売の業界大手。車市場の成熟化や若者の車離れ、販売経路の多様化に伴い、従来の販売戦略が行き詰まりを見せていたなかで、商材との親和性が低いと見られがちなEC事業に取り組んできました。
 
成長の鍵は業界特性に合ったCRM戦略の推進にあると考え、顧客の趣味趣向、ニーズ、ライフスタイルに合った商品提案につなげる方針に転換しました。社内に分散していたデータを集約・分析して顧客像を再定義するなど、顧客を知り抜くことに主眼に置いたCRM戦略を実施した結果、購入率向上を達成。現在にいたるまで店舗とデジタルを融合し、顧客とのつながりを強化するさまざまなOMO戦略に取り組んでいます。

CRM活用事例6.ファンケル

ファンケルは、化粧品・健康食品の老舗メーカー。化粧品事業におけるブランド価値の希薄化という課題に直面するなか、無添加の価値を訴求していくために、大規模な広告戦略およびソーシャルメディアを活用した情報発信に注力しました。EC・店舗・カタログ通販等の販売チャネルをシームレスにつないで顧客情報の共有を促進し、顧客ごとにパーソナライズしたCRM戦略を推進。さらに通販システムの刷新や店舗、Webシステムの刷新を通じてオムニチャネル化を実現しました。
 
同社では、顧客の年齢や性別、購入頻度などの各種データをもとに個々の顧客に合わせた情報提供や商品提案を行う独自のシステムを開発し、パーソナルなコミュニケーションを通じて購入率向上につなげています。

CRM活用事例7.ダブルエー

Oriental Trafficをはじめレディースシューズの製造・販売を手がけるダブルエー。メール経由での売上が全体の20%を占めていましたが、さらに販売力を高めるためにそれまでEC・店舗で分断されていたCRMデータを活用し、夏のセール期間中、Facebookコレクション広告(商品画像が複数組み合わさったフォーマットのFacebook広告)を軸に、EC会員にはECでの再購入を促し、店舗会員にはECへの送客を促す施策を展開しました。
 
約1ヶ月にわたる広告運用の結果、EC会員については807%のROAS(Return on Advertising Spendの略で広告費用に対する売上の割合)、店舗会員については396%のROASを達成し、ECでの夏セール施策による売上は前年比160%を記録しました。

成功事例から学ぶECにおけるCRM活用のコツ

本記事でご紹介した7つの成功事例から、EC事業において特に有用なCRM活用のコツを3つピックアップして解説します。

オンラインとオフラインの融合を検討する

EC事業では、オンラインとオフラインを融合させるOMO戦略が有効な場合があります。店舗とECの融合で成功したDoCLASSEやBEAMSのような、オンラインとオフラインを融合する施策は、EC事業において一度は検討しておく価値があります。
 
BEAMSの場合は、OMO戦略の一環としてスタッフの影響力に注視する戦略を展開し、顧客のファン化を通じて売上増強を達成しました。DoCLASSEでは、Webサイトや実店舗での滞在時間外に顧客との接点を増やす目的でCMやカタログを活用し、販売成果の改善につなげています。
 
デジタルマーケティングが主流になった現在でも、DMやカタログは、デジタルではリーチしにくい層に対して一定の効果があります。CRMツールやMAツールはデジタルチャネルとの連携に特化しているイメージが一般的ですが、オフラインとの連携が可能なツールもあります。
 
株式会社FIDが提供している「MOTENASU」の場合、CRM/MAツールとしては珍しく郵送DMの送付機能が付随しています。郵送DMは、メールやSMSといったオンライン施策と比べて開封率が高い傾向があり、オンオフ融合という観点からも有効な施策の1つです。郵送DMはコストがネックになるものの、顧客分析機能で見込みの高い顧客セグメントに絞ったアプローチも可能。費用対効果の高い効率的なアプローチが実現します。

SNSとの連携を強化する

CRMツール活用における第二のコツは、SNSとの連携強化です。自社のCRMツールとSNSを連携して活用するための戦略を検討する必要があります。
 
ECとの連携が可能なSNSのなかでも、月間アクティブユーザー数が9,200万人を突破するほど人気のLINEは、幅広い層にリーチできる媒体として定評があります。
 
本記事で取り上げた成功事例のなかでも、SABONは2018年からLINE公式アカウントをCRM戦略の主軸に据えて運用を展開してきました。LINE公式アカウントに登録しただけの場合は「友だち」、ID連携を許可した顧客は「仮会員」、ECサイトとLINEユーザーIDの連携を許可した場合は「本会員」と登録者を3つに分け、メッセージや特典などの出し分けに活用するなどの施策を通じて売上増加を達成しています。
 
LINE連携に強いCRMツールの1つがMOTENASUです。LINEを基幹システムやECシステムと連携させ、LINEアカウント情報はもちろんのこと、会員データや売上、受注、行動履歴などの各種データを統合管理し、顧客の分析やメッセージ配信に活用できます。

仮説を立てて検証しながら改善していく

CRMツール活用における第三のコツは、施策を通じて収集したデータをもとに、仮説を立てて検証しながら改善を図ることです。収集したデータは、何もしないままではただの数字に過ぎません。データをいかに分析して傾向を読み取り、次の施策につなげるための戦略を考案できるかどうかが、EC事業成功の鍵を握っています。
 
このポイントは、ダブルエーの成功事例からも明らかです。ダブルエーの場合、最終購買日を起点にセグメント化して広告配信を行い得られたデータから、「本会員とゲスト会員では非アクティブ化を防ぐタイミングが異なる」などの仮説を立て、検証しながら成功パターンを探り続けました。
 
同様に、いかなるEC事業においても、初めから完璧な形でCRMツールを運用できるとは限りません。まずは、手始めに導入しやすい施策から実施してデータを収集し、自社に最適なCRMツールの活用方法を探っていくのが得策です。

自社のECにマッチするCRMの選び方

自社のEC事業に最適なCRMツールを選ぶうえで役立つポイントを3つ解説します。外国製品を含めさまざまなCRMが提供されているなかで、「どのツールが自社のビジネスに適しているのか」を見極める際にお役立てください。

まずは戦略や目標を明確にする

まず、EC事業における戦略や目標を明確にしましょう。初めにツールありきではなく、自分たちがEC事業で成し遂げたい数値目標を設定したうえで、「それらを実現可能かどうか」という観点から、CRMツールを選ぶ必要があります。
 
例えば、「多機能だから良い」という観点でCRMツールを選んだものの、「いつの間にか戦略や目標の達成よりも、CRMツールを使いこなすこと自体が目的化していた」などのケースも散見されます。EC事業において実現したい戦略・目標との関連性が高い機能や特長を備えたツールを選びましょう。

EC向け機能を比較する

CRMツールを選ぶ際は、EC向けに搭載されている機能の比較も重要です。そもそも、検討対象のCRMツールが、EC専用に作られたツールとは限りません。間違いが起こらないよう、「自社の事業内容に適したCRMツールかどうか」を導入前に十分吟味する必要があります。
 
また、一見機能が充実しており幅広い用途に対応していると思われるツールでも、実際に導入してみると運用しにくく余計な業務コストがかかるなどの問題が起こる可能性があります。「過去にEC事業での導入事例があるか」「ある場合はどのような内容か」などをベンダーに確認するのも大切です。

サポート面もチェックする

サポート内容やサポート担当者の対応品質など、サポート面での充実度も、CRMツール導入前にチェックすべき項目です。
 
カスタマーサポートは「チャットもしくは問い合わせフォームでの受付か」「通常の営業時間外でも質問やトラブルに対応してくれるのか」「どのような内容のユーザートレーニングが受けられるのか」「EC運営の戦略構築に関するアドバイスを受けられるのか」「戦略や施策の構築、実施、効果測定とレポーティングまで代行してくれるのか?」といった観点からチェックしてみましょう。
 
ベンダーにより提供されるサポート内容にも差があるため、ツールの導入目的や社内の人的リソースなどとも合わせて吟味が必要です。

まとめ

本記事で取り上げた事例が示すように、EC事業で成功を収めている企業は、徹底してCRM戦略に取り組んでいます。EC事業においてCRMツールを最大限活用するには、OMO戦略の検討、SNS・その他システムとの連携、仮説検証・成果改善などの継続的な取り組みが不可欠です。
 
FIDの「MOTENASU」は定期通販・D2C(Direct to Consumer)事業のOne to Oneマーケティングに特化したCRM/MAツールで、メール/SMS/LINEといったオンライン施策に加えて郵送DMでも効率的にアプローチできるという特長があります。また導入にあたっては専門スタッフが、御社のEC事業の状況に合わせて、CRMによる成果を最大化するサポートを実施します。
 
EC事業においてCRMツール活用による運用の効率化・成果の最大化を目指すなら、MOTENASUのご利用を語検討ください。

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