EC事業におけるCRM施策とは?CRMツール活用を成功させる方法もご紹介
昨今競争が激化するEC市場において、既存顧客に継続的にアプローチを行い、リピート購入へと繋げるCRM施策の重要性が高まっています。今回はEC事業におけるCRM、あるいはCRMツールの重要性・役割について解説を行っていますので、「新規顧客獲得単価の上昇」や「リピート施策」にお困りの方はぜひご一読いただけますと幸いです。
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そもそもCRMとは
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CRMとは「Customer Relationship Management」の略称で、顧客との関係性を維持・管理する考え方を指しています。企業がCRM施策に取り組むのは、顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益「LTV(Life Time Value)」を最大化するためです。
例えば、1,000円の商品を単発購入するユーザーと、1,000円の商品を一生で3回購入するユーザーとでは、企業に与える利益(LTV)に3倍の開きがあります。
昨今あらゆる業界で競争が激化し、新規顧客獲得にかかるコストが増大していますが、1度購入したユーザーを手放して、また一からユーザーを集めるよりも、1度購入してくれた顧客と良好な関係を作り、再度広告費をかけることなく2回目の購入、3回目の購入の機会を創出した方が、高い利益率へと繋がっていきます。
以上のようにCRM施策でLTVを向上させることは、新規顧客獲得の競争が激化した市場において重要視されており、数あるマーケティング施策の中でも優先度の高い施策として位置づけられています。
そして、企業がCRM施策を実施するうえで活用するのが「CRMツール」です。CRMツールには顧客との関係を維持し、さらにはリピート購入やアップセルに繋がる施策を展開するための機能が搭載されています。
企業はCRMツールを活用することで、顧客に対し様々なアプローチを行うことができます。例えばメルマガの配信やクーポンの配布、SMSを使った業務連絡なども、「顧客との関係を維持するCRM施策の1つ」といえます。MA・SFAとの違い
顧客との関係を維持・管理することが目的のCRMとよく比較される言葉に、「MA」「SFA」があります。これらはCRMと異なる考え方・概念を指す言葉であるため、それぞれの意味と違いを理解しておく必要があります。
まずMAとは「Marketing Automation」の略称で、文字通り「マーケティング活動を自動化する考え方」を指します。営業プロセスにおいては、リード(見込み客)の発掘・育成を自動化し、既存顧客に対しては属性・セグメントごとにメルマガなどの配信を自動化します。
一方でSFAとは「Sales Force Automation」の略称で、営業プロセスの可視化を支援する考え方を指します。MAがマーケティングプロセス全体の自動化を意図しているのに対し、SFAは営業プロセスの可視化、作業の自動化を指す点に違いがあります。
CRM・MA・SFAの違いをまとめると、以下のようになります。名称 考え方・概念 CRM 顧客との関係を維持・管理 MA マーケティング活動の自動化 SFA 営業プロセスの可視化、作業の自動化 -
EC事業にCRM、CRMツールが必要な理由
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EC事業では、新規顧客を増やすだけでなく、既存顧客のリピート購入によって継続的な売上を作ることが重要です。なぜなら、新規顧客獲得には多額のプロモーションコストが発生しており、日々新規顧客獲得単価(1人の顧客を獲得するためにかかった費用)が上昇するEC市場で、新規顧客獲得をマーケティング施策の中心に据えるのは、高い利益率を維持するうえでリスクが大きいからです。
1度自社商品を購入したユーザーに継続的にアプローチを行うことで、多額のプロモーションコストをかけることなく、同一商品の追加購入や、別商品のリピート購入へと繋げることができます。たとえユーザーが同じ商品を購入したとしても、EC事業者にはプロモーションコストをかけていない分、残る利益が増えていきます。もちろんCRM施策にかける費用にもよりますが、一般的には新規顧客獲得よりも既存顧客のリピート購入の方が、利益率が高くなる傾向にあります。
また、EC事業にCRMが必要なもう1つの理由として、EC運営担当者の業務が多岐にわたることが挙げられます。例えば、ECサイト運営には大きく分けてフロント業務とバックエンド業務があり、それぞれ以下のような業務がぶら下がっています。
【フロント業務】- ・商品企画
- ・ECサイト制作・運営
- ・商品の仕入れ
- ・プロモーション
【バックエンド業務】
- ・受注・在庫管理
- ・出荷
- ・配送
- ・アフターサービス
EC事業者にとって、商品の受注から配送、アフターサービスまでのプロセス(バックエンド業務)は、スムーズに実行しなければユーザーからの信頼を大きく失ってしまうため、たとえ人材リソースが不足していても万全にしておく必要があります。そのうえで、捻出した時間は自社商品を魅力的に見せたり、顕在層に向けて広告を表示したりするフロント業務の施策へと充てていきます。
こうした商品販売の一連のプロセスとは別に、既存顧客への継続的なアプローチも必要になるため、EC運営担当者が1~2人程の場合には到底手が回りません。そのような時にCRM施策を実行するCRMツールがあれば、自社商品を購入した顧客を一元管理でき、メール/SMS/LINEを使って手軽にメッセージを配信できるようになります。導入するCRMツールによっては、顧客1人ひとりの購入履歴・流入経路などに合わせてメッセージを出し分けることも可能であるため、既存顧客へのアプローチの質を高めつつ、作業の効率化を図ることができます。合わせて知っておきたい「定期通販」の重要性
EC事業では「CRMツールを使ったCRM施策が重要」とお伝えしましたが、そのCRM施策を実行するうえで押さえておきたいのが「定期通販」というビジネスモデルです。定期通販とは、販売者がユーザーに対し、一定の間隔で特定の商品を継続販売する手法を指しています。EC事業者にとって、ユーザーが同じ商品を一定の間隔で購入してくれる定期通販には、CRM施策にかかる負担を軽減し、かつ継続的なリピート購入によって売上予測が立てられるメリットがあります。
EC事業で売上予測が立てられると、プロモーションにかける予算の増加や、仕入れ量の増加による仕入れ単価の削減、バックエンド業務の効率化を目的としたツール利用・導入、といった「さらなる売上拡大に向けた施策」が計画できるようになるため、定期購入を自社の販売戦略の1つとして据えているEC事業者が多く存在します。短期的な売上目標を達成する施策だけでなく、ユーザーの定期購入をきっかけとして、中長期的な成長目標を達成する施策を並行していきましょう。 -
EC事業におけるCRMツール活用のメリット
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EC事業におけるCRMツール活用のメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- ・顧客情報の効率的な管理・共有が可能
- ・顧客それぞれに最適なリピート施策を実施できる
- ・顧客データに基づいたマーケティング戦略の計画が可能
それぞれのメリットについて、下記を参考にしてください。
顧客情報の効率的な管理・共有が可能
先述したように、EC事業では新規顧客を獲得するだけでなく、既存顧客のリピート率を向上させ、売上アップを目指す必要があります。その売上アップに欠かせないのがCRMツールです。CRMツールを使って顧客情報を一元管理することで、施策に応じたセグメント分類が容易になります。
CRMツールを使えば、マーケティング担当者が素早く顧客情報の確認を行ってセグメント分類ができるほか、ステップメール配信や顧客1人ひとりに合ったメッセージの配信など、各CRM施策のPDCAを高速で回せるようになり、売上アップへと繋がっていきます。
また、組織全体で顧客情報を効率的に共有できるため、カスタマーサポート部門などの他部署と連携がスムーズになり、業務効率化も期待できます。顧客それぞれに最適なリピート施策を実施できる
顧客それぞれにリピート施策を実施する代表的な手法に「ステップメール」がありますが、CRMツールを活用することで、単なるステップメールではなく、顧客の購買行動や流入経路などに応じたメールコンテンツの出し分けを実施できるようになります。
例えば、クロスセル促進の一例として、「商品Aを購入した顧客に、商品Aと合わせて購入されることの多い商品Bの追加購入を促すメールを、商品購入直後・3日後・10日後に配信する」などの方法があります。こうしたクロスセル施策でのCRM活用のポイントは、顧客それぞれに最適なリピート施策を、CRMの顧客管理機能によって効率良く管理・セグメント分類し、すぐに施策を実行できるところです。担当者は顧客管理・セグメント分類の作業プロセスを省略でき、配信するメールコンテンツの質を高める作業に注力できるようになります。顧客データの分析に基づいたマーケティング計画が可能
さらに、CRMツールに蓄積している顧客の流入経路・購買履歴・問い合わせ履歴などのデータを分析すれば、有効な流入経路を把握して、広告予算などの効果的・効率的な配分が可能になります。また、顧客データの分析から見えてくる一定のパターンは、リピート施策だけでなく、商品改善や新商品開発、新しい施策の立案へとアイデアを拡げるきっかけを作り、EC事業を拡大させる良質な顧客データとして蓄積されていきます。
昨今のEC市場は大手企業の新規参入、D2Cブランドの隆盛の影響を受けて競争が激化していますが、CRMツールを活用して自社の顧客データを効率的に管理・分析することで、競合よりも少ないコストで、かつ効果の高い施策を発掘することも可能になるでしょう。 -
EC事業におけるCRMツール活用のデメリットとよくある失敗例
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EC事業でCRMツールを活用するメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。
- ・構築コスト・運用コストが発生する
- ・ノウハウがない場合、適切な活用ができない
- ・一時的な売上を重視し、「一斉配信」を繰り返してしまう
CRMツールを導入する際、CRMツールの導入にコストがかかるほか、オフライン店舗がある場合などは各店舗にデジタル端末を設置するなど、体制構築コストも発生します。また、運用コスト(ランニングコスト)も発生するため、CRMツール導入をきっかけに大きく予算を投じていくことになります。
さらに導入後、CRM運用のノウハウが不足していた場合、CRMツールを適切に活用できないケースが想定されます。このような事態を回避するために、CRMツールの導入と同時に運用方法を学んでおくことが重要です。社内で運用方法を発案・検討することも重要ですが、導入支援や運用サポート体制の整ったCRMツールを選ぶことで、活用の幅を拡げるアイデアが得られます。
また、運用について、よくある失敗例として代表的なのが、「一時的な売上を重視した『メールの一斉配信』を繰り返してしまうケース」があります。「ノウハウが不足している」「業務が忙しく片手間の運用になっている」「詳細なセグメント分類をしても、手間の割に売上が小さい」などの理由から、一斉配信の対応に終始するケースもあるでしょう。
EC事業におけるCRM活用のメリットを享受するには、顧客ごとに合ったコンテンツを適切なタイミング・頻度で配信することが重要なため、自社の運用状況に合ったノウハウが学べる体制を構築する必要があります。 -
EC事業におけるCRMツール活用を成功させる方法
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CRMツール活用を成功させるためにまず実施したいのが、「自社にとって何が失敗の原因になっているのか」を明確にすることです。「すぐに改善できる項目」「改善に時間がかかる項目」といった分類を行ったうえで、適切なアクションを積み上げます。
すぐに改善できる項目の一例として、業務効率化が挙げられます。特にBtoC領域のECサイトは、客単価が低い場合が多く、運用にかかる労力に対して費用対効果が見合わない事態に陥りやすいため、CRMツールをうまく活用して業務効率化を推進しましょう。例えば、外部ツールとの連携機能を備えたCRMツールだった場合、組織内で利用している互換性のあるツールと連携するだけで、作業工数を圧縮できます。
一方で、改善に時間がかかる項目の一例として、「運用ノウハウの不足」が挙げられます。一般的な運用ノウハウを情報収集で仕入れることができても、実際の運用との間にギャップは付きものですので、費用対効果に見合った運用が行えるまでPDCAを回しながら、中長期的にノウハウを蓄積していくことになります。ただし、導入支援や運用サポート体制の整ったCRMツールを選ぶことで、ノウハウの蓄積にかかる時間を短縮できる可能性があるため、導入前後に1度検討してみると良いでしょう。 -
EC事業におけるCRM施策例
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CRMツール活用を成功に導くため、EC事業におけるCRMの施策例をご紹介します。CRM施策では、大きく分けて「アップセル/クロスセル」「優良顧客へのアプローチ」「休眠顧客の掘り起こし」といったアプローチが可能です。
「誰に、いつ、何を、どのように」というOne to Oneマーケティングの4分類を用いてCRM施策を実施することが重要なポイントになります。アップセル / クロスセル
CRMツールを活用するうえで「アップセル/クロスセル」の促進は重要性が高く、成功させるためには、継続的なアプローチによる「既存顧客の育成」が必要です。アップセル / クロスセルの施策例として、健康食品の販売例をご紹介します。
- 1.低用量・低価格のお試しパッケージを販売し、顧客リストを収集する
- 2.標準量・価格の通常パッケージの継続的な購入を訴求し、販売する
- 3.同商品の定期販売コースを訴求し、販売する(アップセル)
- 4.同じターゲットに対して、別商品の訴求を行う(クロスセル)
購入のハードルが低い「お試しパッケージの販売」を通して顧客リストを収集した後、通常商品の購入を促します。次に、継続的なアプローチを行い、同商品の「定期販売コース」を訴求してアップセルを狙います。そして、定期販売コースを購入した顧客をセグメントで抽出し、別商品の購入を案内しながら、クロスセルを促します。
さらに引き上げを促す際は、クーポンやポイント付与など、ダブルメリットを組み合わせることで、より効果的な施策になるでしょう。段階的なアップセル / クロスセルの促進では、ステップメールやLINE配信、DM送付などの手法を複合的に使い分け、継続的にアプローチし続けることが重要です。優良顧客へのアプローチ
CRMツール活用を成功に導くために、優良顧客を育成し、LTVを向上させることも重要なアクションの1つになります。施策の一例として、特定の条件を満たす顧客に対し、メールやLINE、DMなどのチャネルを活用したアプローチをご紹介します。
例えば、商品の購入回数が3回以上の顧客を優良顧客と定義した場合、3回目の購入時にアップセル / クロスセル商品の購入をメールで促すアプローチ方法です。この時、優良顧客限定のクーポンやポイント付与など、一般顧客と違った「限定性があるダブルメリット」を付与することで特別感を与えられます。
また、会員ランク制度を導入し、分かりやすく可視化する方法も効果的です。例えば、最も上位のランクが「ゴールド会員」の場合、「ゴールド会員限定シークレットセール」と称したキャンペーンを告知するなど、さまざまな施策を組み合わせてアプローチできます。休眠顧客の掘り起こし
最後に、購入してから一定以上の期間、再購入がない顧客を「休眠顧客」と言いますが、新規顧客の獲得と同様に「休眠顧客の掘り起こし」も、CRMツールの活用を成功させるために重要な施策の1つです。特にEC事業では、新規顧客の獲得と比較して、休眠顧客を掘り起こす方が、広告費用を削減できるコスト面でのメリットがあります。
休眠顧客を掘り起こす施策の一例として、まずはアプローチする休眠顧客の条件を定義してください。例えば「最後の購から60日以上経過した顧客」など、購買データを元に定義する方法がおすすめです。
次に、休眠顧客にアプローチする際の訴求(メッセージ)を検討します。例えば、単純に自社サイトを忘れている休眠顧客に対して、新商品の商品カタログを、メールやLINE、DMなどを活用して案内する方法があります。この際、期間限定クーポンの付与や、ポイントの有効期限を記載するなど、顧客のアクションを促す施策を組み合わせれば、より効果的な施策になるでしょう。 -
EC事業におけるCRMツール活用事例
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ここまでCRM施策例を解説しましたが、EC事業におけるCRMツールの活用事例として、「侍カート・MOTENASU」の導入事例をご紹介します。
関連記事:1年で毎月の新規購入者が数名から5,000名越えに!? 【侍カート・MOTENASU導入事例】
健康食品関係の商材を取り扱うA社は、「新規獲得に伸び悩んでいる」という課題を抱えていました。伸び悩む主な要因として「投下できる広告予算に制限がある」「人的リソースの都合上、適切な効果測定・分析ができない」等があり、これらの課題を解決するために、侍カート・MOTENASUの導入に至っています。そして、導入後の4ヶ月間は「見込み顧客獲得」と「CVRの向上」に注力しました。
具体的には、メルマガ会員だけでなく、公式LINEの登録者数を増やす施策を強化し、LINE CRMを活用したその後の引き上げや、追加訴求の施策を実行する準備を行っています。また、メールやLINE以外にもDM送付、SNS配信、アプリのプッシュ通知など、マルチチャネルを活用した購入訴求を実施しました。
商品LPに至っては、何十パターンものターゲット別にA/Bテストを実施し、よりコンバージョンされやすいLPの制作にも注力しています。さらに、LTV別にそれらの数値と施策ごとのCPOを比較することで、売上販路を適切に把握し、コスト効率の良い広告運用も実現しました。
最後に、特に新規立ち上げの事業では留意しておきたい「キャッシュフローの安定化」にも注力しています。購入料金の回収をしっかりと行い、未払いを防ぐことによって、安定した事業運営が可能になります。侍カート・MOTENASUを活用し、これらの施策を効率的に実施できた結果、A社では導入後5ヶ月目から広告の出稿量を増加させ、課題であった新規定期購入者数が月間5,000名に達する成果をあげています。
その他の活用事例は「MOTENASU導入事例」をご覧ください。
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EC事業のCRM活用に最適な「MOTENASU」のご紹介
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本記事では、EC(通販)事業を運用している方はもちろん、これからEC事業を始めたい方が知っておきたい、EC事業におけるCRMツール活用について解説しました。
運用担当者は、CRMツールが必要な理由や、CRMツール活用によって出来ること、CRMツールを活用するメリット・デメリットなどを知り、売上向上に繋がるCRMツール導入を検討することが重要になります。
「MOTENASU」では、CRM施策に必要なMAとしての機能が備わっています。MA機能とは、煩雑だったマーケティング業務を自動化し、効率的なマーケティング施策を運用できるシステムです。
例えば、CRMに登録されている顧客の名前、性別、年齢、購入状況などの情報を使って、より効果的なステップメールやLINE配信、DM送付などが実施できます。
その他にも、CV率の高いフォームが簡単に作成できる「おもてなしフォーム」や、顧客のステータスを可視化する「スコアリング機能」、お得意様を見える化する「RFM分析・LTV分析機能」など、MAに必要な充実した機能が魅力です。「MOTENASU」を活用すれば、CRMにおいて最も重要な「顧客それぞれに対する効果的なアプローチ」が実現でき、より精度の高いマーケティング施策を行えるようになるでしょう。
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Marketing Automation System "MOTENASU"
マーケティングオートメーションシステム"MOTENASU"の紹介資料です。 "MOTENASU"に関するサービス内容や事例・料金などを知りたい方は 是非ご覧ください。